∞ シャケノベイビー 7 ∞
【 SANJI 】
ゾロがえらい勢いで食べるのを見て、サンジは目を丸くした。
よほど腹が減っていたのかと思いきや、ちゃんと、「おいしい顔」をして食べている。
スピードは早いが、丁寧に丁寧に食べているのがわかる。
ゾロは実は箸の持ち方がとてもキレイだ。
食べる時の姿勢もいい。
ルフィのように食べ散らかしたりしない。
聞くともなしに聞いたところだと、そういう所作も剣の修行の一部だったそうだ。
道場に通っていた幼いころ、先生にみっちりと仕込まれたのだという。
なるほどなあ、と思う。
普段乱暴なくらい粗野で寝汚い奴が、驚くほどキレイな動作で飯を食う。
旨そうに食うよなあ、と思う。
さすがのゾロも、旨い飯には弱いのか、飯を食うときはいつも機嫌がいい。
旨そうにパクパクと食べる。
それを見ていると、ああ、料理人でよかったなあと思う。
みんなを幸せにする事ができてよかったなあ。
ゾロを幸せにする事ができてよかったなあ。
サンジは料理にありったけの愛情を込める。
ゾロが食べてるのは、サンジの全身全霊の愛情だ。
それがゾロの全身の隅々に行き渡って、ゾロの体を作る。
ゾロの強さを作る。
サンジの愛情が、ゾロの強さを作る。
それがサンジには、たまらなく嬉しい。
こんなにも些細な事に、こんなにも幸せを感じる。
だからつい、
「うめぇか?」
と聞いてしまった。
いつも何も言わずにただ食べるだけの奴に。
そしたら。
「すげぇうめぇ。鮭も卵焼きも全部すげぇうめぇ。」
と、大絶賛(ゾロ比)が返って来たので、サンジはびっくりしてしまった。
そういえば、前回の鮭ステーキの時も、ゾロは「うまい」と言ってくれたんだった。
どうしよう。すごく嬉しい。
2004/05/27