■ 第27話 ■ 海の碧 空の蒼/天羽窓花さん
【1】
「好きなんだ」
大好きなんだ。
何度でも、何度でも心に浮かぶ言葉。
好き。
ゾロが好き。
「・・・うん、わかるよ」
「ゾロが・・・好きなんだ」
「そうだよな。好きでどうしようもなくて。ただ好きなだけなのに、見てもらえなくて・・・苦しくて」
「エー・・・ス?」
「で?どうする?俺のところに来る?」
何もいえなく、じっとアスファルトを見つめる。
「同じ気持ちを持つもの同士、一緒にいてもいいかもよ?」
「・・・同じ・・・?」
「好きでたまらないのにな」
「エース・・・」
「すげえ、好きなのに」
「うん」
「あいつだけなのにな」
「うん」
「側に居たいだけなのに・・・な」
「うん」
同じだと、言ったエースの言葉通り、サンジと同じ気持ちの言葉だけが聞こえる。
「エースが・・・優しいのは同じだから?」
「んー・・・まあ・・・ね」
「苦しくない?」
「・・・苦しい」
「つらくない?」
「つらい」
「エース・・・も?」
「まあ・・・ね」
「一緒・・・なんだ・・・」
一人で真っ暗な中もがいていたところに、思いがけなく差し込んだ光。
同じ、想い。
一緒の苦しみ。
なのに、自分と違っているエース。
「エース、どうしたらいいんだ?」
「なにが?」
「どうしたら・・・エースみたいになれる?」
「え?サンジ?」
好きにしろって言われた。
ゾロに。
あの、声で。
なら、好きにする。
もう、迷わない。
捨てられるかもしれないとおびえていた。
好きで好きで、側にいたかったから。
「なあ、エースはその人のことが好きなんだろ?」
「ああ・・・好きだ」
「なのに、俺にも色々してくれたよな?」
「まあな」
少しだけ、知っている「エース」の顔で笑っている。
「どうしたらそうなれる?」
「うーん、難しいよ?サンジにはたぶん」
好きになってもらうことばかり考えていた。
受け取ることばかりで。
いつだって、ゾロのくれるものをもらい続けていた。
居場所も、暖かさも、痛みも。
もらってばかりで、自分は返していただろうか。
好きだと、言葉にするだけでゾロに与えていただろうか。
想いを、温かな心を、ゾロから奪ってばかりのモノを。
「俺は、俺に戻る。・・・戻ってあいつを好きでいる」
「・・・難しいよ?」
「でも、俺は俺だから」
忘れかけていた。
あの日、行き場をなくした自分に手を差し伸べてくれたゾロ。
あの手の温もりに縋って、それだけにしがみついて。
だから、ゾロがどこかにいってしまう。
戻ってくるのを待つしかなくなってる。
サンジがサンジである事をやめてしまっているから。
好きだと、ゾロに伝えるために。
ただ一つの心をゾロに差し出すために。
サンジに戻る。
今着ているスカートも、ブラウスも。
『ゾロのためのサンジ』のものでしかなくて。
『サンジがサンジ』であるためのものじゃなくて。
だから、サンジはサンジに戻る。
ゾロのためのサンジじゃなくて、捨てられてしまったサンジに。
■ STORY TOP ■