■ 第九話 ■ 海星夜/横島櫂さん
サンジは一人ぽつんと座っていた。
さっきまでひくんひくんと蠢いていた股間のモノもすっかり萎えてしまっている。
ゾロにとって自分はなんなのだろう。
手っ取り早く金を稼ぐのに、都合のいい相棒。
やっぱりそんなとこなんだろうか。
けれどそれなら、あれは。
そこらには売っていない新色のグロスは。
高級品で、自分に似合うピンク色のグロス。
わざわざ自分のために買いに行ってくれたのかもしれないと、ほんのちょっとでも思ってしまった自分が間違っているのだろうか。
ぽたりと熱い滴が、剥き出しの腿に落ちる。
ごしごしと瞼を擦って、のろのろとバスルームに向かった。
熱いシャワーを浴びて。
一番お気に入りの服を着て。
綺麗にお化粧もして。
そして、出かけよう。
ゾロは今夜、帰って来ないかもしれない。
帰って来るかもしれない。
来ないかもしれない。
そんな事をずっと考えながら待つのは嫌だ。
それならいっそ、何も考えずにすむように。
自分が一晩家を空けた方がいい。
支度を済ませて、鍵を掛ける。
泥棒が入ったって、盗むようなものなんか何も無い部屋だけど。
手の中の鍵を、サンジはぎゅっと握り締めた。
家を出てきたって、行く宛てなどどこにもない。
ただふらふらして、時間を潰して。
適当な時間に戻ろう。
そうしたらきっと。
何もなかったように笑える。
ゾロに置いていかれた事が、死ぬ程辛かったなんて、そんな事ゾロには絶対に判らないように。
足は自然に、遊び慣れた街へと向かう。
どうしたって、明るい光に誘われる。
そこには人が大勢集まっているから。
時間を潰すネタにも困らないだろうし、沈みがちな気分を盛り上げてくれるコトもあるかも、だ。
とりあえず馴染みのゲーセンでも覗いてみようと、その入口をまたいだ所で見知らぬ男たちに声を掛けられた。
2005.5.27
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