■ 第三話 ■ GOLD FISH/きぬこさん
「ガイジン?」
「ガイジン」
「ガイジーン!」
少女たちがくすくす笑いながら囁き会う声は、当然サンジの耳にも届いている。
彼女たちだってそれはわかっているはずなのに。
女の子たちは、時にひどく残酷だ。
サンジは知らなかったが、少女たちは自分たちより可愛かったり綺麗だったりする相手には手厳しい。
平日の昼下がり。
マツキヨの化粧品売り場で、サンジはなんとなくグロスを見ていた。
ゾロにもらったやつが残り少なくなってきたから、次も同じのを買おうとして。
化粧品にそれほど詳しくないサンジだったので、なかなか見つからない。
うろうろしているうちに、女子高生たちの注目を集めてしまったらしい。
見てくれは確かにガイジンのサンジだ。
白すぎる肌に、一目で染めたのではないとわかるさらさらの金髪。
澄んだ真っ青な瞳はカラーコンタクトなどでは絶対に出ない色。
どれを取っても、年頃の少女たちの羨望と嫉妬の的にならないものはない。
それを全くわかっていないサンジは、なんだかとっても居心地が悪くてたまらない。
さっさとグロスを見つけて買い、とっとと店を出ようと思った。
「ええと・・・」
見つからない。
うろうろしていると、
「何かお探し?」
後ろから声をかけられる。
驚いて振り向くと、店員がにこにこと立っていた。
「あ・・すいません・・・」
手にしていたスクールバッグ(ゾロが「どうせなら小道具にも凝ろうぜ」と笑いながら、新宿のそれ系の店で買ってきた)からグロスを取りだした。
「これと同じのがほしいんですけど・・・。」
「え、それ・・・」
20歳を少し過ぎたぐらいの、その人のよさそうな店員がちょっぴり目を見張る。
「ありませんか?」
「うーん、うちではねぇ・・」
そう言って苦笑する。
「あ、いいんです。なければ。」
店員の様子に、サンジは慌てて言った。
「ごめんねぇ。うちではそんな高級品、取り扱ってないのよ。」
「え?」
「たぶん大きなデパートだったら売り場があると思うんだけど。ああ、そうだ。銀座になら間違いなく直営店があるわよ。」
「銀座?」
「そう。並木通りってあるじゃない?ブランド・ストリート。直営店が出来たって、この間テレビでやってたから。ねえねえ、それって今年の新色でしょ。」
「はぁ・・・」
なんでだ?ゾロは確かに言ったんだ。
『ゴム買いに行ったついでだ。目についたからよ。』
確かに、これくれた時にそう言ったんだ。
『新色だってよ。似合うんじゃねぇか。』
って。
「綺麗なコーラル・ピンクねぇ。すっごく似合ってるじゃない。」
店員が羨ましげに笑う。
「あなたの肌の色とぴったり。見立て上手な彼氏でいいわね。」
『ゾ、ゾロ?銀座までゴム買いに行ったのか?』
サンジはちょっと混乱して、えへへ・・へ?と店員に笑ってみせた。
そんなサンジを、店員は照れてるのね可愛いわと誤解してくれていた。
2005.5.22
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