■ 人斬り ■
【 参 】
鬼退治をしてほしい、と、赤髪に依頼されたのは、それから三日後のことだった。
「……なんだと?」
思わず聞き返したゾロに、赤髪は相変わらず昼行灯よろしく酒を啜りながら、「鬼退治だよ、鬼退治。」と、軽い調子で答えた。
「話したろう?“美しく白き鬼”だ。」
赤髪のその言葉に、刹那、ゾロの脳裏に、緋襦袢を纏った鮮やかに白い肢体が浮かぶ。
あのあと、どんなに探しても、ゾロは、あの金の髪の夜鷹に再び会うことは叶わなかった。
ゾロが瞑目して黙ったままでいるのを、赤髪は酒を呷りながら言葉を継ぐ。
「鬼の剣は無差別でなァ、太刀持ってる奴なら藩士だろうと町人だろうとお構いなしに斬りやがる。さすがに俺達もこのまま放置は出来なくなってなァ。」
「……。なら、てめェらで始末つけりゃァいいじゃねェか。」
「そうしたいのは山々なんだが、あいにく腕に覚えの者達は所要で離京していてな。こうしてお前さんに頭下げるしかないって寸法だ。」
とても頭を下げているようには見えない尊大な態度のまま、赤髪が酒を呷る。
その視線がちらりとゾロの腰に落ちる。
「そんなわけで、ここはひとつ桃太郎さんよろしく鬼退治と洒落込んじゃくれねェかね。ま、今のお前さんじゃあ、お供にゃ一刀足りねェが。三刀流。」
口調は柔らかいが、目は笑っていない。
この赤髪という男、いつでも人を茶化すような態度で軽口を叩いてくるくせに、どこか底が知れない。
心の奥底まで覗いているかのような目で人を見る。
この男が世間に知られるようになったとき、この男は既に隻腕だった。
友の為に片腕一つくれてやっただとか、いや友ではなく女の為だとか、その時に飛び散る己の血を浴びて髪が赤く染まっただとか、門外漢のゾロの耳にすら聞こえてくるほど、噂だけは事欠かなかったけれど、左腕を失うほどの大怪我をしておきながら、この男は何一つ失ってなどいないという顔で飄々としている。
飄々とした態度のまま、人を威圧してくる。
ゾロを“人斬り”ではなく、“三刀流”と呼ぶのもこの男だけだ。
二年前まで、ゾロは三刀流の剣術家だった。
腹に傷を受けたとき一刀を失い、それからゾロは“三刀流の剣士”から“二刀流の人斬り”になった。
今ではもう、三刀流のロロノア・ゾロを覚えているものももはや少ない。
なのに、赤髪はゾロを“三刀流”と呼ぶ。
「俺は人斬りだ。鬼を斬ったこたぁねぇ。」
内心を隠して、ゾロは言った。
初めて、自分から自分を“人斬り”と呼んだ。
赤髪は真意の読み取れぬ目でじっとゾロを見ている。
「気がすすまねェか?」
問われて、ゾロは咄嗟に、
「いや。」
と答えた。
依頼された仕事を断ったことなどいまだかつて一度たりともない。
それでも心に僅かに何か引っかかる気がするのは…多分、鬼と聞いて、思う影があるから。
小さくため息をついて、ふと、ゾロは気づいた。
顔をあげ、赤髪を見据える。
ゾロの目に険が篭もる。
「…腕に覚えの者達がいねェだと?」
赤髪がわずかに眉を動かした。
「一番の腕利きが残ってるじゃねェか。」
ゾロの視線はまっすぐに赤髪を見ている。
「何でてめェがやらねェ。…“鬼退治”。」
ゾロの言葉に、赤髪は、一瞬、ほんの一瞬、真顔になった。
すぐにそれは、いつもの酒に溺れているような半分笑ったような顔になる。
けれどゾロは、その刹那の変化を見逃さなかった。
「あー…、だって、俺ァ片腕だしィ?」
「戯言を。」
ゾロは取り合わない。
それでもヘラヘラと笑いながら適当に言い逃れようとする赤髪の姿に、ゾロの腑に確信が落ちてくる。
間違いない、この男は…。
「赤髪。…てめェ、鬼の正体知ってんだろう。」
沈黙が二人を包んだ。
ゾロは射殺すような視線で赤髪をじっと見ている。
赤髪はその視線を受けてもただ静かに酒盃を傾けている。
「答えろ。」
押し殺したゾロの声が、沈黙を破った。
「鬼とは何者だ。」
ゾロの脳裏に浮かんでいる白い影を、赤髪に否定してもらいたい、と心の奥底で密かに思いながら。
けれど、赤髪から帰ってきた答えは、ゾロの予想を遥かに凌駕したものだった。
「ありゃあ、赫足の亡霊だ。」
─────瞬間、ゾロの胃の腑が凍りついた。
□ □ □
二年前、ゾロはまだ人斬りではなく、藩士だった。
三刀流という我流の剣法を極め、師事した剣術家の道場の塾頭を務めていた。
皆、ゾロが次期館主になるのだろうと思っていたし、ゾロ自身もまたそう思っていた。
だが世の中はゾロをただの剣術家にはさせてはくれなかった。
政変。
幕府は将軍継嗣問題で揺れ、ゾロの藩は対立する政敵からの弾圧を受けた。
大恩ある藩主が永蟄居されるという事態になるに至って、ゾロの師匠を初めとする藩士達は決起した。
雪の降りしきる夜、脱藩したゾロ達は、闇に紛れて時の大老邸に押し入った。
寝込みを襲われた大老家は、それでもさすがに手ごわく、辺りはたちまち阿鼻叫喚の戦場となった。
来る者来る者を次々に斬り伏せ、ゾロは屋敷の奥へと進んだ。
大老を斬ったのはゾロだった。
姦計を用いて我が主君を追い落とした大奸物とは思えぬほどに威風堂々とした風体の老人で、全身から噴き出る気合は、一瞬ゾロの殺気を削ぐほどだった。
その太刀捌きは豪胆な事この上なく、大老が、地位の上に安閑として暴利を貪る男ではなく、日々鍛錬を欠かさぬ紛れもない武将である事を物語っていた。
一瞬の迷いは、ゾロに隙を生んだ。
大老の刀が一閃し、ゾロは袈裟懸けにその身を裂かれた。
全身を己の鮮血に染めながら、それでもゾロの刀は、大老の喉笛を掻き切っていた。
そのままゾロはその場に昏倒し、力尽きた。
瀕死のゾロを、仲間が見つけ、引きずるように連れ帰った。
そうしてゾロが目覚めた時、全てが終わっていた。
ゾロの手元には、三刀あったはずの刀は、二刀しか残っていなかった。
いったいいつ、一刀を失ったのか、ゾロは全く気づかなかった。
ゾロの師匠は主犯として捕らえられ、斬首されていた。
酷い拷問にも、頑として自分の単独犯であると主張し続けたまま、処刑された。
ゾロの与り知らぬところで政治的な思惑も絡んでいた。
そうしてゾロは生き残った。
生き延びたゾロは、やがて人斬りと呼ばれるようになった。
腰には、師匠の形見の白い刀、そして黒い刀。
もう一本、他の二刀と共に絶えず帯びていた赤い刀は、ついに見つからなかった。
□ □ □
しんしんと降りしきる雪。
ゾロは夜の古都を、ただ澹然と歩いていく。
大老の喉笛を掻き切った時、ゾロは、大老が故意にゾロに致命傷を与えなかった事に気がついていた。
「何故、殺さぬ!」
叫びながらゾロは大老の喉を突いた。
ごぼごぼと喉から血を溢れさせながら、どう、と倒れ伏した大老は、喉を傷つけられ不明瞭な声で、
「おぬしの太刀筋を見ていたら若い息吹を散らすが惜しゅうなった。」
と答えた。
あの時の大老の、不思議な慈愛に満ちた目が、ゾロは今でも忘れられない。
事件後、ゾロは、大老が国許では名君として慕われている事を知った。
広い目で見れば、ゾロの藩主の永蟄居をやむなし、と考える向きもある事を知った。
自分たちの思想が必ずしも正しいとは限らぬ事を知った。
ゾロ達の犯した大老暗殺が、他の政敵による権謀術数に謀られていた事を知った。
拷問の後に命を落とした師匠の後を追って腹を斬りたいと、ゾロは何度思ったろう。
そのたびに、拷問に耐えてまでゾロを守り通した師匠が、或いはまた、大老が死に際に見せたあの目が、ゾロに「生きよ」と諭しているような気がして出来なかった。
赫足の殿様。
それは、自らも農民と一緒になって痩せた土地に鍬を入れ続け、赤い土で汚れた足に、民が送った、大老の栄名であった。
雪の中を歩いて行くゾロが、ふと顔を上げた。
血の匂い。
それは歩を進めるに従い、どんどん濃くなってゆく。
都の通りを繋ぐ大橋まで来て、ようやくゾロは、その匂いの発する元に行き着いた。
夥しい血溜まりの中、男が倒れ付している。
月代姿の男は、一刀の元に両断され、完全に事切れている。
その傍らに佇む、一人の女。
薄衣を頭から被った、たおやかな後ろ姿。
腰の刀に手をかけて、ゾロは一歩踏み出した。
「お侍様…。」
か細い声。
「だから申し上げましたのに。」
淡い薄衣を目深に被ったまま、“女”が振り向く。
「この橋は鬼の出る橋、行ってはなりませんと…。」
振り向いたその姿を見て、ゾロは息を呑んだ。
真っ白な羽二重。
降りしきる雪明りに映えて、光沢のある美しい髪は、白金の輝きを放っている。
白い肌は、蝋細工の如く艶かしく。
冴え冴えと冷たい光を放つ、どこまでも透き通った氷の瞳。
それはまさしく雪の化身と見紛うような、
「……………………………………………“美しく白き鬼”。」
慄然とゾロが呟いた瞬間、“鬼”の紅い唇が、にいっと笑った。
何もかもただひたすらに白い姿の中、紅を引いた唇だけが、まるで鮮血のように毒々しく紅い。
「サンジ……………ッ…………!」
そこに立っていたのは、三日前に思うさまかき抱いた、愛しい姿。
だがその姿は、もはや別人のように禍々しかった。
禍々しく、美しかった。
「久しいな………ロロノア……。」
サンジが陶然と呟く。
まるで旧知のような、奇妙な言い回しに訝しんだゾロは、次の瞬間、瞠目した。
サンジの手に握られた、真紅の刀。
鮮血を浴びて、凄まじい妖気を放っている。
ゾロが己に気がついてくれたと悟ったか、刀は、サンジの手の中でかたかたと嬉しそうに鍔を鳴らした。
その見覚えのある紅糸巻の太刀拵。
二年前、ゾロの手から失われた、紅い刀。
歴代の持ち主が悉く命を落とし、ゾロだけが唯一御しえた、妖刀と称された刀。
名を、三代鬼徹と言う。
「こいつを唆したのは、てめぇか、鬼徹!!!!」
雪の都に、ゾロの怒号が響き渡った。
サンジが嫣然と微笑む。
「唆したとは異な事を。この者の業の深きがゆえの事と言うに。」
「…何だと?」
あの美しく海を湛えたような瞳が、血のように赤く染まっている。
すっ…と、サンジが、鬼徹の刃を自分の首筋に寄せた。
「サンジ…よせ…ッ!」
ゾロが息を呑む。
鬼徹は人の血を好む妖刀だ。
その刃先がほんの少し触れただけで、サンジの肌をたやすく裂くだろう。
「この者は、人に生まれながら人として生くるを許されざる者。我もまた、刀として生まれながら、その
「てめぇの
ゾロがサンジを見据えて言う。
サンジは赤い瞳で薄く笑ったままだ。
「ああ、そなたは完璧な
すうっとサンジの口元から笑みが消える。
「あの男に斬られるまではな。」
鬼徹の言う「あの男」が、ゾロに唯一太刀傷を与えた、あの大老を指しているのだと、ゾロはすぐに悟った。
「あの男に斬られた時、我を御していたそなたの力が一瞬失せた。その時、我は我を欲するこの者の声なき声を聞いたのだ。」
「鬼徹…。」
「我がこの者を誑かしたのではない。この者が我を取り込んでしまったのよ。」
どこか歌うように、サンジの口を借りた鬼徹はそう言った。
その瞳が、鮮血のような真紅から、ひんやりと透き通った水晶に戻っていく。
「サンジ!」
サンジが戻ってきた事に気づいて、ゾロは叫んだ。
「ゾロ。」
ゆっくりとサンジが微笑む。
「鬼徹の言うとおりだ。俺は俺の意思で、“鬼”となった。」
鬼となり、人を斬った。
その言葉に、ゾロの心が軋む。
「…何故斬る。」
それは図らずも、サンジが閨でゾロに問いかけた言葉と同じものだった。
「それしか生き方がねェからだ。」
そして帰ってきたサンジの答えも、あのときのゾロと同じ。
けれどゾロは、何故、と問わずにはいられなかった。
「仇討ちなら俺を斬れ!」
ゾロが怒鳴る。
「赫足の大老を斬ったのは、俺だ。サンジ!!!」
ゾロこそが、サンジの仇だ。
「知ってる。見ていた。」
あっさりと、サンジがそう返す。
ゾロは目を見開いたきり、絶句した。
「お前が赫足に斬られるところも、お前が赫足を斬るところも、全部見ていた。」
あの時、賊の侵入に気づいた大老がまずやった事は、女子供を裏木戸から逃がすことだった。
その中に、サンジも含まれていた。
だがサンジはそれを拒み、刀を取って戦おうとした。
それを大老は、力づくで布団で簀巻きにして、押入れに叩き込んだ。
決して出てくるなと言い置いて。
その襖を背にして、大老はゾロを迎え撃ったのだ。
サンジは必死に抜け出ようともがいて、そしてもがきながら、襖の間から見た。
大老自慢の黒刀が、三刀を携えた若い侍を大上段から袈裟懸けにするのを。
斬られた若侍が、全身から紅蓮の如き血飛沫を噴きながら、大老の喉に刀を突き立てるのを。
「その時俺は決めたのだ。大恩あるあの男の供養の為、千人の御霊捧げると。」
うっすらとサンジの口元に浮かんだのは、笑み。
「この紅い刀は、俺に力を貸してくれただけだ。」
サンジの言葉に呼応したかのように、鬼徹が、サンジの手の中で、かたりと鍔を鳴らす。
「千人の…御霊…だと?」
ゾロが呆然と言う。
「そんな理由で…罪なき者を手にかけていたというのか?」
サンジがくすりと笑った。
「てめェがそれを言うか?“人斬りゾロ”。」
「天誅と辻斬りにどれほどの差がある?同じ人殺しに違いはあるまい?」
サンジの瞳が赤く閃いて、この言葉が鬼徹のものだと知らしめる。
けれど恐らく、サンジもまた同じ気持ちであるのだろう。
「それにな、ゾロ。」
サンジが言葉を継ぐ。
「罪なき人間など、この世にはいない。」
ゾロが、一瞬、瞑目する。
次に瞼を開けた時、ゾロの瞳は人斬りのそれになっていた。
ゆっくりと、腰の刀を抜く。
二刀の内、白い一振りを。
それを、サンジは口元にうっとりと笑みを浮かべながら、見ている。
「白塗鞘太刀拵……大業物21工……。名刀、“和道一文字”。」
名を呼ばれ、ゾロの手の中の白い刀が、かた、と微かに鳴った。
「血塗られたそなたの手に在りながら、斯くも白く清く美しき御身よ。」
サンジの中の鬼徹の呟きは、もはや恋焦がれる者のそれだ。
「今宵、そなたの命と共に貰い受ける。」
サンジの首筋に触れていた刃が、すっと、ゾロの眉間に突きつけられた。
人斬りの目が、獰猛な光を帯びる。
金に光る獣の瞳のまま、ゾロがにやりと笑った。
「やれねぇな。」
凛とした声が、闇に響く。
「俺のもんになるのはてめェの方だ。」
ゾロが動く。
重い体躯を感じさせないその速さに、サンジが目を見開く。
低く構えた姿勢のまま突っ込む。
その剣が確実にサンジを捕らえたかと見えた瞬間、白い痩身がひらりと身を躱す。
ゾロの視界から、サンジが消える。
ふわり、とその場に、サンジの纏っていた薄衣だけが舞う。
ハッとして振り向くと、橋の欄干の上に人影。
凄まじい風圧と共に、その影から銀の切っ先が襲い掛かってきた。
ゾロが咄嗟に刀を構える。
刀と刀がぶつかり合い、ぎぃん!と、凄まじい金属音を立てた。
交差する刃を挟んで、二人の視線が絡み合う。
金の獣の目と、紅い鬼の目。
「その瞳だ、ゾロ…。」
小さくサンジが囁いた。
「赫足の仇討ちなどではない…鬼徹に取り込まれたのでもない…。」
お互いの体を刃で押し合って、二人の体が離れる。
「てめェのその瞳に、俺は狂わされたんだ…、ゾロ…。」
すっ、と、サンジが鬼徹を頭上に構えた。
赫足のそれとよく似た、大上段の構え。
逆にゾロは、重心を低く、脇構えの姿勢をとった。
そのまま、二人は互いを見据えて、動けなくなる。
どちらも共に隙がなく、どちらも共に、一撃必殺の構え。
ただじっと、機を待つ。
雪が降っているというのに、ゾロもサンジも、首筋にじっとりと汗をかいている。
互いに互いの隙を見極めるべく、ぴくりとも動かない。
一瞬、サンジの右足が動いた。
かと思った次の瞬間、舞うようにその体が滑り込んでくる。
ゾロもまた右足を大きく踏み込む。
闇を切り裂く銀色の閃光。
勝負は一瞬だった。
二人の体が交差する。
ややあって、先に膝をついたのは、ゾロだった。
バッと音を立てて眉間が割れ、血が噴き出し、ぼたぼたと雪の上に落ちる。
銀白の上に紅い花が咲く。
それをサンジは紅い瞳で見つめ、妖しいほどに艶かしく美しい笑みを浮かべ………………そのままその体は崩れ落ちた。
見る見るうちに白い羽二重が紅に染まっていく。
「…だから…、言ったろうが。」
サンジの手から滑り落ちた、紅い刀を、ゾロが拾い上げる。
「俺のもんになるのはてめェの方だと。」
「───────────────────────サンジ。」
ゾロの唇から吐息と共に漏れたその囁きは、まるで睦言のように優しかった。
純白の雪の上に散る、紅い花弁。
月の如き光を放つ金の髪の間から、蒼く透き通る水晶の瞳が覗いた。
─────────ぞろ。
その瞳が、ふわりと、まるで幼子のように無垢に笑んだ。
□ □ □
それきり都では白き鬼に斬り殺される者はいなくなった。
鬼は人斬りに斬られたのだとか、いやいや鬼が人斬りを食い殺したのだとか、人の噂は口さがなかったが、真実を知る者は誰一人いなかった。
そして、人斬りと呼ばれた男の行方も、その後、杳として知れない。
2005/09/23
終
DEAR JUNKさんで開催されていたIMAGE WORK Ver.'05に投稿したもの。
繭子さんのお描きになられた“人斬り”の予告漫画に恐れ多くもインスパイア(使ってみたかった単語)されまして、不遜にも捏造小説を送りつけました。
繭子さんのマンガは、普通に太刀と脇差だったのに二刀流とか書いたり、安政の大獄と桜田門外の変と赤穂浪士の討ち入りが混ざってたり、ゼフなのにミホークだったり、といろんな捏造の嵐だったのに、繭子さんはそれはそれは優しく受けとってくれたのでした。ああ、ありがたい。なんていい人なんだ。
繭子さん、素敵企画に参加させてくださいまして、ありがとうございましたー♪♪♪
なんか、死んだんだかなんなんだかよくわからん終わり方ですが、死んでないです。
本当はこの後、「死んだと思わせて実は生きてて二人でお船のって海に出ましたー」なごちゃごちゃがついてたんですが、たしかフカヒロさんが「やりすぎ」とか言ったんで、削除したりしました。削った部分のプロットはこんな感じ。
書くに当たって、花魁だの陰間だのいろいろ調べて、いっぱい無駄知識を仕入れました。楽しかったです。
京都に行きたくなりました。
あとえーっとえーっと最初に出てくる揚屋の主人はガイモンさんでお願いします。
DEAR JUNKさん閉鎖後、出戻っていた拙作ですが、まーるさんとみうさんの愛の巣「人斬りと花魁」部屋に再びお嫁に行きました。
はあああ、ありがたやありがたや。
閉鎖されていたDEAR JUNKさんも復活されて、はあ、幸せ♪