港。
行きかう人々。
異人も多い。
船。
甲板。
金髪の着流しの男。
異人も多く行き交うこの港では、金髪はそう珍しくない。
珍しいのは、金髪が和装をしていると言うことか。
金髪の傍らには、墨染めの僧衣の男。
僧というにはあまりに眼光が鋭い。
僧のくせに、三本も刀をさしている。
金髪は怪我でもしているのか、具合が悪いのか、辛そうに船べりに身を預けている。
僧衣の男が、支えるようにして、金髪の背をゆっくりと撫でる。
「痛ェから触るな。」
「すっぱり斬れてたからな。」
「…斬った奴が言うな。」
金髪が、僧衣の男に身を預ける。
僧衣の男はそれを抱きとめる。
人目を引く二人組のその仕草に、乗り合わせた異人達がひそひそと噂しあう。
「…なんだ?」
僧衣の男が、それを気にする。
金髪が、僧衣の男に身を預けたまま、くっくっと笑い出す。
「“生臭坊主”、だとさ。」
僧衣の男が苦虫を噛んだような顔をする。
おもむろに開き直ったように、金髪を抱き寄せる。
「坊主が稚児つれて何がおかしい。」
耐え切れず、爆笑する金髪。
その髪に指をくぐらせて顔を向かせる僧衣の男。
「口吸ってもいいか?」
「ここでか? 酔狂な坊主だ。」
そう言いながら、船の上で接吻する二人。
仰天する周囲。
見ぬふりでしっかり見られている。
「知ってるか? 南蛮では接吻の事をキッスというんだそうだ。」
「…行きてぇか?」
「ん…?」
「南蛮。」
金髪の男がゆっくりと首を振る。
「…お前と共に行くのなら、俺は、例えそれが修羅の道でも構わない。」