GRAYxCLAUDIA I
…混沌の
迷宮 …。どす黒い、どろどろと混濁した、ゼリー状に凝固した重い混沌の海。
その中を、意識は
墜 ちていく…。いつまでもいつまでも
墜 ち続ける。どこまでもどこまでも深く。
闇の、底へ。
それはいつまでもいつまでも終わりがない。
どこまでもどこまでも
墜 ち続ける。いったい…どこまで…?
心の底から、恐怖が沸き上がってくる。
いつまで
墜 ち続ける…?それは、呼吸すらままならないほど、重く圧迫してきて、意識を無に
還 そうとしていた。────クローディア …
心に浮かぶ名を、呼ぶ。
怯え、逃げ惑うクローディアが目に入った。
────何故逃げる。何故怯える、クローディア。
己から逃げていくその姿に、刹那、狂おしいほどの怒りに視界が真紅に染まる。
────クローディアあぁ!!
闇に轟く咆哮。手を伸ばすと、その躰はあっさりと捕まった。
己の手の中で、クローディアは驚くほど華奢で小さい。
たやすくねじ伏せる事が出来る。
腕を掴むと、小枝を折るような小さな音と、軽い手応えがあった。
クローディアは泣き叫び、助けを請う。
逃れようともがいている。
逃げられはしないのに…。
誰の名を呼んでも無駄だ。誰にも渡さぬ…。コノオンナハオレノモノダ…。他の誰かの名前なんか…呼ばせない…!
クローディアの口の中に指を突っ込んで、柔らかい舌を力任せに引き抜く。
ごぼっと、クローディアの喉が鳴り、鮮血があふれだす。
思ったとおりの…鮮やかな…紅の血…。白い肌に映えて、なんと美しい…。
クローディアの瞳から、涙が真珠のように零れ落ちる。
綺麗な涙……………
…なぜ泣く? クローディア…。
オレガコンナニ───シテイルノニ…?
そんなに泣くのなら…その眼をえぐってしまおう。その…綺麗な…ヘイゼルの瞳を…。
えぐった眼球を舐めると、甘い、せつない味がした。
舌を抜かれても、眼球をえぐられても、クローディアはまだ美しかった。
それが、よりいとおしさを増すような、むしろ憎悪をかき立てるような、恐ろしいほど強い欲望が突き上げてきて、欲望のままに、その躰を割り広げ、柔らかな粘膜を引き裂き、貫く。
クローディアの絶叫。
…ああ…、お前はどこもかしこもみんな柔らかくて脆くて壊れやすいね…。
貪るようにクローディアを犯す。
残酷な律動を繰り返すたび、全身に震えるほどの愉悦が走った。
しまいにその行為は、クローディアの内蔵を突き破らずにはいられない。
容赦なく乱暴に突き上げるたび、えぐられた眼窩から、喉から、様々な器官という器官すべてから滂沱の鮮血があふれ、クローディアのなめらかな肢体を伝い、ねっとりと温かい、真紅の水たまりを作った。
クローディアの首ががくりと後ろに垂れる。
抵抗はもはや、ない。
それでも陵辱はやまなかった。
あふれる血に全身を薔薇色に染めながら、ワインのごときその芳香に酔い、恍惚感に陶然としながら、グレイは、口元に喜悦の薄笑いを浮かべてクローディアを屠り続けた───────………
────イケナイ!
コレハ… 夢ダ…! 早ク目ヲ覚マサナケレバ────!
心の中で警鐘が鳴り、グレイは、強引に自分を眠りから引き剥がした。
室内には、柔らかな朝の光が満ちている。
…ゆ…め …………………?
心臓が、ばくばくと早鐘を打っていた。
全身が、汗でびっしょりだった。
なんて、夢だ ……………!
大きく息をついて、震える呼吸を、鎮める。
俺が…クローディアに…あんな……………
グレイは、頭を振って、その夢を無理矢理、心の隅に押し込んだ。
身支度を整えてパブに行くと、もう皆が集まっていた。
クローディアがグレイに気づき、ぱっと顔を輝かせる。
「おはよ、グレイ」
眩しいほどの笑顔。
不意に、悪夢の記憶が、グレイの心を掠める。
よかった… 両目ともちゃんとある…
ほ…と、小さく安堵のため息をつく。
綺麗な…ヘイゼルの瞳…
クローディアが笑顔で寄ってくるのを、グレイは、悪夢の罪悪感からか、わざとらしく無視するように受け流して通り過ぎ、カウンターに座る。
頬に、クローディアの不安げな視線をちりちりと感じる。
そんなクローディアに、アルベルトが声を掛けた。
グレイも機嫌の悪い朝だってあるよ、等と言いながら、クローディアを仲間達のいるテーブル席に連れて行く。
何度もこちらを窺いながら、それでも素直にアルベルトについていくクローディア。
そのまま、クローディアは、アルベルトとなにやら談笑をはじめた。
横目でそれを見ながら、グレイは寝起きの一杯をあおる。
こうして見ていると、つくづくと、クローディアとアルベルトは“同質”だと分かる。
二人を包む、その独特の空気。
言い換えるならば、それは、貴族性とでも言うのだろうか。
二人の周りだけ、明らかに空気の色が違っていた。
人種も育ちも違うというのに、同じ色のオーラ。
周りのものを全て拒絶するような、特殊な空間。
アルベルトは分かる。彼はイスマス城主の息子だ。生まれながらに貴族として、温室で何不自由なく育てられた、骨の髄まで上流階級の人間だ。
だが、クローディアは、およそ貴族とはかけ離れた育ち方をしている。
森の中で、魔女と呼ばれていた老女に、森の番人として熊や狼と共に育てられたのだ。
およそそれは、礼儀とか作法といったものからは遠く離れた生活だったのに違いない。
なのに、クローディアのこの、アルベルトと並んでいても見劣りしないほどの…、いや、遥かにしのぐ気品は何なのだろう。
────血…か。
グレイは、クローディアの指に目をやった。
白魚のごとき指を飾る、珊瑚の指輪。
その台座の繊細で上品なレリーフといい、透けるようなブルーといい、はめ込まれた珊瑚のクオリティといい、そのこまやかな細工は、素人が見ても容易に逸品だと分かる。
バファル帝国皇帝の、皇女の証。
その指輪を見つめながら、グレイは我知らず、深く息をついていた。
クローディアは、己れの出生を知っているのだろうか。
その事について、グレイがクローディアと話した事は、なかった。
もし知ったら、クローディアはどうするだろう。
バファルへ「帰る」だろうか。
この旅を終わりにして。
グレイの脳裏に、玉座で王冠を抱くクローディアの幻影が閃いた。
それはいかにも、クローディアにふさわしい道のような気がした。
きり…っと、グレイは、強く唇を噛んだ。
* * *
「ね、グレイ、ちょっとい?」
と言って、クローディアがグレイの部屋に来たのは、夜もだいぶ更けての事だった。
「グレイ…、何か、あった?」
心配そうにグレイを見上げている。
「何かこのところ…少し変だから…。」
「別に。何もない。」
にべもなく答えるグレイ。
何もない、と言いながら、その眉は不機嫌そうにひそめられている。
グレイのその苛々とした様子に、クローディアはたじろいだ。
一緒に旅を共にしてきて、こんなに苛立ったグレイを見るのは初めてだった。
そっけない素振りをしながら、いつでもクローディアにはこまやかな気配りで接していてくれてたのに。
「…あたし…なにか、した?」
気づかぬうちに、何か怒らせるようなことをしてしまったのだろうか…。
「いや、別に。」
そのまま、沈黙。
クローディアは、なす術もなく立ち尽くしてしまう。
ここ数日、グレイはずっとこんな調子だ。
旅は順調だ。バトルではいつものように頼りになる。何も言わない。もとより無口な男ではあるが…。
だが、なぜか避けられてるような、気がする。
それも、クローディアだけ。
もっとも、バーバラ、シフ、アルベルト、グレイ、というメンバーでは、グレイとそう親しく話す、という者もいないのだが…。
それでも、バーバラとは気も合ってるみたいだし、シフとはバトルの事でよく盛り上がってもいるようなのに…。
クローディアが泣きそうな目でグレイを見る。
その戸惑いと、不安が、グレイには手にとるように分かった。
だが、それがまた、グレイの神経に障る。
何故こんなにも苛つくのか、グレイ自身にも分からなかった。
だが、己の心の中に、得体の知れない闇が巣食っているのが分かる。
自分で自分の感情がコントロールできない。
そんな事は生まれて初めてだった。
それがグレイを苛つかせるのだ。
あんな悪夢を見たのもそのせいだ、と思う。
いったい何だ、このもやもやは……
まるで、自分の心が
迷宮 にでも迷い込んでしまったかのようだ。「グレイ………」
クローディアがつぶやく。
心配そうに、グレイを見上げている。
美しいヘイゼルの瞳。
光の加減で、薄いグリーンのグラデーションが現れる、透き通った淡褐色の瞳。
高貴な血統を雄弁に物語る、妙なる瞳……。
ふいっと、グレイは、その瞳から目を逸らした。
「………部屋に戻れ。」
「グレイ…」
「こんな時間に、女がそんな格好で男の部屋に来るもんじゃない。」
寝る為の、薄物を一枚まとっただけの、クローディアの姿。
クローディアでなければ男を誘ってるとしか思えないところだ。
この格好で、部屋を出て、廊下を歩き、グレイの部屋まで来たのかと思うと、グレイの中に尚さら苛立ちが募る。誰かに見られでもしたらどうするんだ…。
迷いの森の中で隔絶されて育ったせいか、クローディアは性的に幼いところが多く、出会った初めの頃は、平気でグレイの目の前で着替えようとすらした。
そういえば…。
いつだったかもこんな格好で夜中に部屋に来た事があったな…。
グレイの脳裏にその時の事が浮かぶ。
夜中のノックの音に、グレイが警戒しながらドアを開けると、涙を瞳いっぱいに浮かべたクローディアが立っていた。
「眠れないの…。シルベンとブラウがいないから…。」
それは、オウルを一人残して旅立つ事を心配したクローディアが、それまで片時も傍から離れた事のなかった狼のシルベンと熊のブラウを、森へ帰しての、初めての夜だった。
生まれて初めて一人で夜を迎えるという事に、クローディアは怯えていた。
「ここは星も見えないわ…。動物達もいない…。木々のざわめきも聞こえない…。」
22にもなって一人寝が寂しいもなかろう、と喉元まで出かかったグレイだったが、幼子のように泣きじゃくるクローディアを放ってもおけず、その夜、グレイはクローディアを自分のベッドに入れたのだった。
女と同衾して、朝まで腕の中で抱きしめていたのに、その体には指一本触れない、というのは、グレイにとっては初めての事だった。
思えば、グレイの中の苛々は、この頃から生まれ始めたようにも思う。
夜中にあられもない格好で部屋に来たり、平気でベッドに潜り込んできたり、腕の中で安心しきって眠っていたり、クローディアは俺を男だと思ってないんじゃないか…?
「グレイ?」
クローディアが訝しげに小首をかしげ、グレイの顔を覗き込む。
唇が触れるほど、間近に。
その瞬間、グレイの中で、何かが弾け飛んだ。
無言のまま、クローディアの手首を掴み、引き寄せる。
「!?」
驚くクローディア。
クローディアの腰を抱え、抱き寄せる。
強引に、口付ける。
「んっ……!?」
クローディアが目を見開く。
その体が、びくっと硬直する。
反射的に逃れようとするのを押さえ込み、尚も、その柔らかな唇を乱暴に吸い、舌をねじ込む。
クローディアの歯を、口腔を、舌を、荒々しく探り、ねぶる。
キスなど初めてだったろう。クローディアは硬直したまま、あらがう事もできない。
しかし、あまりの執拗さに、呼吸さえもままならず、クローディアは、本能的な恐怖を感じ、もがいた。
クローディアの目に、涙がにじむ。
「いやっ…!」
振り払った手がグレイの口元を掠めた。
「
痛 ッ…」がりっと嫌な感触がして、グレイはその痛みに思わず手を離した。
隙を突いて、突き飛ばすようにグレイから離れ、部屋の隅に逃げ、壁を背にしてこちらを向き、その場にへたり込む、クローディア。
はあはあと肩で荒い息をつき、怯えた目でグレイを見上げている。
陵辱された唇に、震える指で触れる。
その指に、珊瑚の指輪。
グレイは痛みを感じた口元に手をやった。
薄く血が付いていた。
クローディアの珊瑚の指輪の細かな細工が、グレイの肌を傷つけたのだ。
グレイにはそれが、クローディアの根源が持つ不変的なもの…“高貴なもの”が自分を拒絶しているかのように思えた。
指先についた己の血を、ぺろりと舐める。
その口元に、薄笑いが浮かんだ。
すぐにそれは邪気のこもった真顔になり、グレイは無言のままクローディアに近づくと、その頬を思い切り平手で張り飛ばした。
「きゃっ!」
反動で床に倒れ伏すクローディア。
すかさずグレイは、その体に覆い被さるように馬乗りになるようにのしかかり、怯えて抵抗するクローディアの両腕を、片手で易々と掴んでクローディアの頭上に引き上げて、そのまま力任せに床に押し付けた。
「いや…! グレイ…っ…!」
クローディアの顔には、恐怖と怯えと、そして混乱が浮かんでいる。
クローディアには、グレイが何故突然こんな事をするのかがまるで分からない。
性的な知識もろくにないクローディアには、自分がこれからどんな事をされるのかも良く分かっていない。
優しかったグレイの突然の豹変に、ただ慄いているのだ。
一瞬、モンスターに憑かれたのかとさえ思った。
まさか、ヴァンパイヤに? …でも…
モンスター特有の妖気は、目の前のグレイからは感じられない。
「やめて… グレイ… やめて…!」
クローディアは、何とかグレイに正気に戻ってもらおうと、必死に訴えかけた。
しかし、グレイは、眉一つ動かさず、その胸元を乱暴に引き下げた。
「いやぁっ!」
びりっと薄い布地の避ける音がして、クローディアの乳房があらわになった。
ぷるん、とした、思いもかけず、大きな乳房。
クローディアは慌てて胸を隠そうとするが、グレイに動きを封じられ、それもままならない。
グレイが、クローディアの乳房を鷲掴みにした。
「ああ…っ…!」
その豊かな量感に、グレイは少し驚き、ほくそ笑む。
着やせする
性質 だったらしい。こんなに胸が大きいとは思わなかった。思えば、毎日のように弓を引いているのだ、乳房が大きいのも当たり前か。
グレイは、その瑞々しくふっくらと柔らかな乳房を、力任せに思い切り掴み上げた。
「あああっ!」
クローディアが悲鳴をあげた。
グレイは尚も、なめらかな感触を楽しむように、ぐにぐにとクローディアの乳房を揉みしだく。
その肌は、森の中を駆け回っていたにしては、びっくりするほど、ぬけるように白かった。
「あっ! あ…! いや…っ! グレイ… やめ…やめて…!」
片方の乳房をわざと乱暴に揉み上げながら、もう片方の乳房にむしゃぶりつく。
「ひあっ!」
クローディアの体がのけぞった。
形のいい乳房の上に、つん、と乗った、薄桃色の小さな乳首。
グレイは、いきなりその乳首に歯を立てた。
「ひッ!!」
クローディアの体が、再び反り返る。
敏感なところを思い切り噛まれたのだ。
痛みとショックに、クローディアの体ががくがくと震える。
グレイがクローディアの乳首をきつく、強く、歯を立てて吸いたてる。
まるで、わざと快感を与えないようにしているかのように。
それでなくても、グレイの豹変に怯えきっていたクローディアは、快感どころではなく、その苦痛に、ただただ喘ぐ。
クローディアの白い肌に、赤くその痕がつく。
「や…め…てぇ…ッ…」
クローディアの頬を、涙が伝う。
その瞬間、グレイの脳裏に、あの悪夢がよぎった。
この美しい瞳をえぐって、眼球を啜ったら、どんなにか甘いことだろう…。
ほとんど恐怖に近いほどの誘惑に、グレイの背筋が総毛立った。
そうしてその瞬間、己が狂おしいまでにクローディアを欲していた事に気づく。
────そうだ…俺は…こうする事が望みだったんだ…
クローディアの両腕を封じたまま、裾を割り、下着を引きちぎる。
「いやああああっ! グレイ! いやっ! いやあっ!」
さすがにクローディアの抵抗は一段と強くなった。
もう死に物狂いで足をばたつかせる。
グレイは構わず、クローディアの動きを封じる意味もこめて、その足を高々と持ち上げて、クローディアに押し付けるようにして左右に押し広げる。
クローディアの秘所が、グレイの視線に晒される。
「い………やあ……ッ……!」
体を無理に屈曲位にされているため、胸を圧迫されて、うまく声が出せない。
乳首と同じく薄桃色の花弁。
────どこもかしこも上品にできてやがる。
「み…見ないで……お願…」
クローディアの弱々しい懇願を無視して、グレイは、自分の前を広げ、既にそそり立っていた己れの欲望を取り出した。
クローディアが、もし、それを目にしていたら、その大きさに、更に恐怖を感じていたに違いない。
グレイの逞しい体躯にふさわしく、大きく怒張したそれは、慣れた女でも目を見張るほどの長さと太さを兼ね備えて、グレイの股間で天を衝くほどに猛り狂っていた。
グレイの口元に薄笑いが浮かんだ。
グレイは
躊躇 う事なく、潤ってもいないクローディアの秘裂を、貫いた。「─────────────ッ!」
声にならない悲鳴。
激痛がクローディアをえぐる。
内臓が裂かれるような衝撃。
グレイが残酷に突き上げるたび、それはクローディアを苛んだ。
「ひ… 痛… あ…あ…ッ… ひぁ… うっ…!」
クローディアの唇がわななく。
ショックで大きく見開いたその目から、涙が零れ落ちた。
グレイは、クローディアの体を揺さぶるようにして、何度も、深く、突き入れる。
「あ… あっ… うぅ…っ も… 許し… 許して… グレイ… お願い…」
濡れてもいないところを無理矢理に挿入したのだ。
その行為は、グレイにとっても苦痛しかなかった。
しかし、グレイはきつすぎる秘所に、何度も何度も己れをねじ込んだ。
グレイの口元に、あの悪夢と同じ喜悦の薄笑いが浮かんでいた。
その常軌を逸した笑みを目にして、クローディアが愕然とする。
「や… いや… いやああああ…っ…!」
怯え、もがく。
不意に、ぬるり、とした感触が、グレイを包んだ。
ほのかに血の匂い。
その濡れた感触に、グレイの性感は急速に高まり、
「くぅっ!」
と、声を上げ、ひときわ深いところに己を打ち込んだ。
どくっ!
「ひあああああっ!」
クローディアの悲鳴が響く。
どくっ どくっ と、クローディアの体の中で、グレイのモノが震える。
そのままクローディアに覆い被さり、グレイは、はぁっ…はぁっ…と、荒い息をつく。
グレイの体の下で、クローディアはぴくりともしない。
クローディアの中に全て注ぎ終えると、急激に、グレイの頭の芯から熱が引いていった。
覚めていく興奮とは逆に、怒涛のように押し寄せる、罪悪感。
一瞥たりともクローディアに目をやらず、クローディアから体を離す。
クローディアがどんな顔をしているのか、どんな目で自分を見ているのか、グレイにはもはや自分の目で確かめる事など出来なかった。
クローディアから目を背けたまま、グレイは慌しく服を身につけると、クローディアを一人残し、逃げるように部屋を出た。
後に残されたクローディアは、しかし、その見開いた瞳は何も映してはいなかった。
呆然と天井を見上げ、傷つき、汚れた肢体を床に投げ出したまま、その場に転がっている。
喉…痛い…
最初に覚えたのは、強い、喉の渇きだった。
お、み、ず…
虚ろな瞳のまま、クローディアは、のろのろと体を起こした。
「あ、
痛 う…っ…」体のあちこちが痛かった。
体の芯に、重い疼痛がある。
手首を見ると、くっきりと指の跡がついていた。
乳房にも点々と赤い跡がついていて、薄く血が滲んでいるものもある。
それを、クローディアは魂のない目で見つめる。
立ち上がろうとして、かくん、と、膝から崩れ落ちる。
「あ…」
膝が立たなかった。
どうして立てないのかしら…と、ぼんやりとした意識が頭を掠める。
しばしぼんやりとしたのち、ほとんど無意識のように、ふらり、と立ち上がる。
ふらつく体。焦点の合わない瞳。
その様子は、まるで亡者のようであった。
体にまとわりついた、もはや服とは呼べない布地が、体からするりと滑り落ちる。
体を引きずるように、ふらふらと、夢遊病者のような足取りで、バスルームへ向かう。
シャワーのコックをひねる。
冷たい水が勢いよくクローディアの体を叩く。
浴びるには冷たすぎる水だったが、クローディアは何も感じなかった。
おみず…
クローディアは、緩慢な動作で、水の出口を振り仰ぎ、口を開く。
こくん、と、少しばかりの水を嚥下する。
不意に、
「あ…」
体の奥から、ぬるっと何かが出てくる感触がした。
足元に目をやった。
鮮血と、白濁した液が混ざり合ったピンク色の液体が、クローディアの白い足を伝っていた。
その鮮やかな色彩に、うつろな瞳に、ゆっくりと、魂が戻る。
そ・う・か…あ・た・し… グレイに………
焦点の合わない瞳が、次第に覚醒してくる。
グレイ…グレイが…あたしに……
涙があふれてきた。
「ふ……… っく…………」
涙があふれて止まらなかった。
喉がしゃくりあげる。
ひとたび堰を切ると、嗚咽は止まらなかった。
とめどもなく滴り落ちる涙。
崩れるようにそのまま座り込む。
静かな嗚咽は、水音の合間を縫って、いつまでもいつまでも続いていた。