ちびねこSS
● | ゾロ | ..... | 犬・3歳 |
● | サンジ | ..... | 猫・生後2ヶ月くらい? |
● | ナミ | ..... | 猫・2歳 |
● | ルフィ | ..... | 小学一年生 |
● | シャンクス | ..... | パパ・27才・受 |
● | ベックマン | ..... | ママ・30才・攻 |
◇ 第四話 ◇
結局その日、ルフィは、すっかり仔猫に興奮してしまったせいで、ゾロの散歩には行けず、遅刻しそうになりながら慌しく家を出て行った。
次いで、嫁のベックマンが台所を片付け、洗濯物を干してからパートに出掛ける。
旦那のシャンクスは甲斐性なしなので一日中家にいる。
今日みたいにルフィがゾロを散歩に連れて行けない日は、シャンクスが代わりに餌をやったり散歩に行ったりする。
だが、シャンクスの散歩は、ほぼ全力疾走で行って帰ってくるルフィのそれとは違って、非常にのんびりだ。
シャンクスは犬に付き合って走ろうという気などはなっからないらしく、そもそもサンダル履きで、ぺったぺった歩く。
だからゾロもシャンクスとの散歩の時は走らないでのんびりとことこ歩く。
ゆったりした散歩を終えて帰ってくると、庭木に隠れるようにしてチビネコがこっちを窺っていた。
シャンクスは気づかないらしく、ゾロを小屋に繋ぐと母屋に帰っていく。
玄関のドアがパタンと閉まるのと同時に、チビネコが猛ダッシュでゾロのところに戻ってきた。
「ぞろ!」
「あ?」
チビネコに名前を言われて驚く。
「ぞろはぞろっていうんだって、なみさんてきれーなおねーさんがおしえてくれた。」
「ああ、ナミに会ったのか。飯もらえたか?」
「うん。おいしかった。」
「そうか、そりゃよかった。」
「おれ、にんげんのいえ、はいったんだぞ。どーだ、すげぇだろ。」
「あー…すごいすごい」
ゾロは投げやりに褒めてやったのに、チビネコは得意そうにしている。
その様子がおかしくて、ゾロは思わず笑った。
それから、チビネコはゾロの傍で一人で遊び始めた。
寝そべるゾロのすぐ近くで、チビネコは走ったり転げたりなかなかに忙しい。
落ちている木の枝に向かって、ちっちゃいお尻をぷりっと上げて威嚇していたかと思うと、ひらひらふわふわ降ってくる落ち葉を両手でキャッチしようと上を見ながら手をワタワタさせて、しまいにはバランスを崩して後ろにでんぐりがえったりしている。
見ていて飽きない。
日中好き勝手に出歩ける猫と違って、犬であるゾロは、繋がれているから散歩の時以外は一日中昼寝をしている。
だが今日は、チビネコの遊びについつい見入っていた。
それでも、襲いくる睡魔には勝てずうつらうつらしていると、不意に、
「ぞろぉ…こわいよお…ぞろぉ…」
というか細い泣き声が耳に届いて、ゾロはがばっと跳ね起きた。
見渡すと、チビネコの姿がない。
「ぞろ…おりれない…こわい…」
またチビネコの声がした。
どこだ?と声を頼りに辺りを見回すと、庭の槙の木の枝にチビネコがしがみついていた。
「何やってんだ、お前?」
どうやら登ったはいいが降りられなくなったらしい。
「うううううるさいっ!いいからこっからおろせよっ!」
強がっているがよほど怖いのだろう、尻尾の先はぶわっとふくらんでいるし、涙目で枝に必死で爪を立てている。
だがその木の高さはさほどでもなく、ゾロが立ち上がれば充分に届く。
ゾロは下枝に足を掛けて立ち上がると鼻先に触ったチビネコのお尻を、笑いながら、つんとつついた。
「わああああっっ」
途端にチビネコが悲鳴を上げる。
「おおおおおおちっ、おちっ…!」
「落ちたって大した高さじゃねェよ。お前猫だろうが。」
「そそそそそそうだけどっそうだけどっっっ!」
チビネコは大きな目をいっぱいに見開いて震えている。
やれやれ、とゾロは笑ってチビネコの傍に鼻先を突き出した。
「おら、掴まれ。」
言うと、枝にしがみついていたチビネコは、しがみつく先をゾロの鼻面に変えて、ぎゅうっと爪を立てた。
仔猫の爪だから傷にはならないが、ちっちゃくて薄い爪は意外と痛い。
ゾロの視界いっぱいに怯えた猫の顔。
鼻先にはふわふわした産毛の感触がある。
「しっかりつかまったか?」
そう聞くと、チビネコはこくこくと頷いた。
それを見て、ゾロは猫がしがみついたままの鼻先を、そうっと地面に下ろした。
地面につくや否や、チビネコはあっという間に遊びを再開させた。
所狭しと庭中を駆け回る。
それを見ながら、ゾロは、やれやれ、と安心して昼寝を始めた。
2007/12/11