ちびねこSS
● | ゾロ | ..... | 犬・3歳 |
● | サンジ | ..... | 猫・生後2ヶ月くらい? |
● | ナミ | ..... | 猫・2歳 |
● | ルフィ | ..... | 小学一年生 |
● | シャンクス | ..... | パパ・27才・受 |
● | ベックマン | ..... | ママ・30才・攻 |
◇ 第二話 ◇
懐に抱え込んだぬくぬくは思いのほか心地よくて、ゾロは夜の寒さを忘れてぐっすりと眠った。
「ゾロー散歩行くぞー!」
いつもだったらとっくに目覚めている時間なのに、飼い主の声が聞こえるまで寝入ってたのは、だからそんな訳だった。
「ゾーロー、まだ寝てんのか?」
声と共に、黒髪の少年がひょこっと覗き込んできた。
途端に、腹巻きから顔だけ出していたチビネコが、ビクン!と飛び上がった。
「あ?」
少年が驚いた顔をする。
「何だ? ゾロ。その猫どうした?」
少年が近付くと、チビネコは怯えて小屋の隅に逃げ込んだ。
「チビ? どっからきたお前?」
その時、母屋から声が聞こえた。
「ルフィ!早く犬の散歩行って来い!」
ルフィ、と呼ばれた少年も、負けじと怒鳴り返す。
「シャンクス! 犬小屋ん中に猫がいる!」
「あァ? ナミがか? 嘘言え。」
「ナミじゃねェよ、ちっちぇー黒い猫!ゾロと一緒に寝てる!」
「はあ? 何言ってんだ、お前?」
「ほんとなんだってば。来てくれよ!」
ルフィの声に、玄関から赤い髪の男が出てきた。
犬小屋を覗き込み、
「ほんとだ。猫だ。わーちっちぇー。かわいー。」
と、ルフィと顔を並べてはしゃぎだす。
ゾロにとってはおなじみの飼い主一家だが、チビネコは大きな目をさらに大きく見開いて、全身で警戒している。
「チビ〜、チビネコ〜おいでー」
伸ばされる手に、チビネコは全身の毛を逆立ててフーッと威嚇する。
「ルフィ、やめとけ、怯えてる。かわいそうだ。」
「なんでだよー、怖くねェよ。おいでー。」
「やめとけって。」
威嚇しているのに、チビネコは目にいっぱい涙を溜め、足はがくがく震えている。
しかもゾロに縋りつくようにくっついている。
ルフィに悪気がないのはわかっているが、さすがに可哀相になったゾロは、しっぽをぱふん、と振って、チビネコの姿を隠してしまった。
「あ、ゾロ! ずりぃぞ、お前ばっか!」
ルフィが怒るのにも、ゾロは寝たふりをしてごまかした。
シャンクスが怒るルフィを宥めている。
「シャンクス! ルフィ! 飯だぞー!」
その時、黒髪の男が、おたまを振り回しながら母屋の玄関から顔を覗かせた。
「おう、ルフィ飯だとよ。」
シャンクスがルフィを突っついて、やっとルフィは犬小屋から離れた。
しぶしぶといった顔で家に入る。
チビネコは、まだゾロの尻尾の下でぶるぶる震えている。
「おい、人間は行っちまったぞ。」
ゾロが声をかけると、びくん、と体を起こして、チビネコは一目散に犬小屋から飛び出した。
「あ、おい! チビ!!」
ちっちゃい毛玉はあっという間に縁の下に逃げ込んで見えなくなる。
やれやれ、とゾロはため息をついた。
昨夜は危惧するほど無防備な猫だと思ったのに、人間に対するこの警戒心の強さはなんだろう。
ただ捨てられただけじゃなく、子供にいじめられたりでもしたか?
仔猫を気にかけながら犬小屋に戻ったゾロは、その時になって、仔猫に興奮したルフィがゾロの朝ご飯を置いていくのをすっかり忘れてしまっている事に、ようやっと気がついたのだった。
「ルフィ〜〜〜〜! 俺の飯はあああああ???」
2005/11/22