血の深緋の烈華の如く
【 捌 】
だが、それきり、ゾロとサンジは二度と再び会う事は叶わなかった。
大人達の事情は子供達の想いなど遥かに凌駕したところで回っていたのだ。
まず、成り行きとはいえ漁夫の利の如くシマを拡大したセンゴクに、他組織から批判が相次いだ。
小さな揉め事が頻発し、そのせいでゾロは小学校への復学ができなくなった。
5年生、6年生と、ゾロは家庭教師をつけられ自宅で過ごした。
そして登校できないまま、小学校を卒業した。
中学は、家庭教師の甲斐あって、私立を受験して入学した。
その間にセンゴクは隠退し、ミホークが跡目を継いだ。
更には隠退したはずのゼフが、一等地に会員制の秘密料亭を建て、再び裏社会に深く関わってくる事となった。
完全中立を謳い、どの組織にも属さず、けれどあくまでも一介の料理屋というスタンスを崩さない、全く異質の存在としての立場を、ゼフは確立した。
そのかわり、ゼフの養子の存在は完全に秘匿された。
どんな場にも決して姿を現さず、人の口の端にも上らなくなった。
死んだのではないか、という噂すら流れた。
もちろんゾロは信じなかった。
何度も父に、サンジに会わせてくれと訴えた。
だが全く取り合ってもらえなかった。
それどころか、サンジの名を出すことすら禁じられた。
ゾロが高校を卒業すると、ミホークは七武海の会食に、部下としてゾロを伴うようになった。
バラティエの門をくぐりながら、ゾロは、きっとここにサンジはいるに違いない。と思った。
実際、サンジを探してバラティエの中をうろついた事もある。
けれど、バラティエは、その特殊な造りによって、厨房の場所すらわからないようにしつらえてあった。
厨房どころか、バラティエは、別室の客同士が顔を合わせる事すら、困難だった。
それでも、ゾロの中から、あの夏休みが色褪せる事は決してなかった。
月日がたち、あの夏休みから13年がたっても、ゾロの想いは何一つ変わらなかった。
いつか絶対また会えると、ゾロは信じていた。
だから。
だから、すぐにわかったのだ。
腕の中のこの青年が、あの少年だということが。
「サン、ジ…。」
喉に張り付いたまま出てこなかった声が、やっとその名を紡いだ。
ゾロ、と掠れた声が耳元で答えた。
13年前、女の子のように高かったシュガーボイスは、ハスキーな深みのある男の声になっていた。
身長も、もうゾロとそれほど変わらない。
髪に顔をうずめれば、ひなたの毛布のにおいではなく、タバコのにおいがする。
相変わらず線は細いが、顎に無精ひげなど生やしていて、どこをどう見ても、もう女と見間違うことなどない。
なのに。
サンジはこんなにも面変わりしたというのに、ゾロは一瞬で、目の前のサンジに心を奪われていた。
サンジの存在そのものが、ゾロの心を惹きつけて、放さない。
会いたかった…と、サンジの耳に囁いて、ゾロは抱きしめる腕に力を込めた。
「俺もだよ、ゾロ。」
サンジが答える。
聞き覚えのない声が、懐かしそうに優しく甘く、大切そうに、ゾロ、と己の名を呼ぶのは、不思議な感覚だった。
あの頃のサンジの面影などまるでない、見知らぬ声なのに、どこをどう聞いても明らかに野郎の声だというのに、サンジが紡ぐ自分の名は極上の響きを持っていた。
こほん、と、小さな咳払いが聞こえて、二人は我に返った。
そういえば、ここはミホークの屋敷で、ミホークとコウシロウの目の前だった。
サンジが頬を赤らめて慌てて離れようとするが、ゾロはサンジの背に腕を回したままそれを許さない。
「ぞ、ゾロっ…!」
サンジが身じろぐ。
「だめだ…もう二度と放さねえぞ。」
「ゾロ…。」
「13年だ、サンジ。俺は13年待った。もうお前を手放す気はない。逃げるなら鎖で繋いで俺の部屋に閉じ込める。お前は俺のものだ。そう誓ったはずだ。そうだろ?」
「ゾロ…。」
鎖で繋ぐ、等と物騒な事を言っているのに、そのゾロの顔はまるで置き去りにされた子供のように弱々しい。
とても荒くれ者達を総括するボスには見えない。
サンジは緩く微笑して、小さく息を吐いた。
「そうだよ、ゾロ。俺はお前のものだ。」
優しく囁かれて、ゾロは大きく目を見張った。
自分でも内心、なんて目茶苦茶な事を口走っているのだ、と思っていただけに、サンジがあっさり肯定した事が信じられなかった。
サンジが、両手でゾロの頬を挟む。
子供の顔を覗き込むように、ゾロの顔に自分の顔を近付けた。
ソーダ味のドロップのような蒼い瞳が、ゾロを見ている。
空と海を溶かし込んだような蒼い蒼い色。
「なあ、ゾロ。俺がお前にした約束を覚えているか?」
「約…束…?」
「お前の守り刀になりたいと言った、あの約束だ。」
ゾロが息を呑んだ。
─────今度は俺がお前を守る。絶対守る。
─────お前の刀に俺がなる。
─────ゾロはお母さんの刀で敵を倒せばいい。俺はお前の守り刀になる。
─────ゾロを守りたいんだよ。ゾロが俺を助けてくれたように俺もゾロを守りたいんだよ。
─────ゾロが好きだ。だからゾロの守り刀になりたい。ずっとゾロのふところの中でゾロを守りたい。
─────俺、強くなる。ゾロを守れるくらい、強くなるよ。
─────ゾロ、大好きだ。大好きだよ。
「俺はあの時の約束を果たしに来たんだ。」
「な…に…、」
「お前の組織の事を、ミホーク会長に聞いた。」
その言葉に、ゾロが瞠目する。
「俺の組織の事を…親父は何と?」
聞き返しながらゾロはちらりとミホークに目をやった。
ミホークは涼しい顔をしている。
「姿なき鼠がチーズを喰い荒らしているようだと。」
そのあまりに父らしい喩えに、ゾロは思わず小さく笑った。
だがその笑みは苦々しい色に満ちていた。
鷹の目から暖簾分けして半年、ゾロの組織では、小さな異変が起きつつあった。
どうも、内部情報が漏れているようなのだ。
構成員のほとんどが、ミホークの組織にいた者達ばかりだ。
内部の者の手によるものだとしたら、ゾロは、家族同然に思ってきた者達を疑わなければならない。
それは身を切られるように辛かった。
「俺を傍に置いてくれ、ゾロ。お前を守りたいんだ。」
サンジが言う。
だがゾロは、ふと、サンジを値踏みするような目で見た。
「サンジ…。それでお前が…、お前こそが鼠でないと言う保証がどこにある?」
ゾロが突き放すような冷たい声で言った。
「ゾロ君…。」
さすがにコウシロウが咎めるような声を出した。
だが言われた当のサンジは、少しも激昂することなく、むしろニッコリと笑って見せた。
「俺が信じられなくなったら、俺を斬ればいい。簡単な事だよ、ゾロ。」
一点の曇りもない笑顔で、サンジはそう言い切った。
「俺を斬る時は、ゾロのお母さんの形見の刀がいいな。まだ持ってるんだろう?」
「………ああ。」
「なら、それで斬ってくれ。」
きっぱりと言い切ったサンジは、誇らしげですらあった。
その笑顔に眩しさを覚えて、ゾロが絶句する。
「それは惜しい。いらぬなら俺が貰い受けよう。先刻もそういう話であった。」
ミホークの言葉にゾロが目を剥く。
慌ててサンジを抱き寄せて、
「誰がいらないっつった!これは俺のだ!」
と怒鳴った。
ミホークはしたり顔の笑みを浮かべている。
「ならば大切にするのだな。先刻も言った通り、研ぎ師が精魂込めて研ぎ上げた逸品だ。」
「……わかった。」
ゾロは神妙な顔で頷いた。
「だけどサンジ。本当にいいのか?俺はもう小学生のガキじゃねえ。俺の守り刀になるって事は、危険に晒されるって事だ。俺の傍にいれば汚い事も見なくちゃなんねえ。お前は本当にそれでいいのか?」
「もちろん。」
「死ぬかもしれないぞ?」
「構わないよ。」
「…赫足を巻き込むかもしれねェぞ?」
「…覚悟の上だ。」
矢継ぎ早に尋ねても、サンジは笑顔を絶やさなかった。
それが、
「…ガキの頃の約束の為に…命を懸けるのか?」
と、ゾロが聞いたときだけは、きょとんと目を丸くした。
ああ、サンジだ、と思った。
透き通った蒼い目を大きく見開くと、やけに幼く可愛らしく見えた、サンジ。
その時の表情のままだった。
ゾロと同い年のはずなのに、まるで未成年のように見える、幼い顔。
その顔が、まるで母親のように慈愛をたたえて、ふわりと破顔した。
「違うよ、ゾロ。」
抱擁をねだるように、大きく手を広げる。
「ゾロを愛してるからだよ。」
何のてらいもないその一言に、ゾロはもう耐えられなかった。
サンジの体を抱きしめて、その唇に、キスをする。
父親が見ている前だが構わなかった。
「親父…、守り刀一振り、確かに拝領した。」
そう言って、サンジの唇にまたキスをした。
見られていることを恥じたのだろう、サンジは抗うように身をよじったが、ゾロは許さなかった。
若者達の接吻を目の当たりにしながら、ミホークもコウシロウも微笑んでいた。
コウシロウは、まるで結婚式の誓いのキスのようだな、と思ったが、そう思った事は秘密にしておこう、と思った。
長く深い、誓いのキスだった。
2007/3/32
[*]BACK|To be continued...
【千腐連エロコメント】
フカ:さ、ラストよ!
フカ:玉っっっ
きぬ:さ、893よ!
玉:さて、じゃあ、今日はこの辺で
玉:おやすみなさーい
きぬ:まあ待て(がし
玉:わあ
フカ:馬鹿いってんじゃねーーー
玉:わあわあ
きぬ:さ、一年越しの893です
きぬ:たま、エロは?
フカ:エロは??エロは???
玉:小学生でエロがかけるか!!
きぬ:さすがにそっちじゃないよ(笑<小学生
きぬ:サンジとゾロの脂汗だらだら初挿入は?
玉:来年だ、来年!!
玉:らーいーねーんー
きぬ:来年か!
フカ:千腐連とともに永遠に続く893なのね
玉:ほんとは汗だらだら初挿入がメインのはずだったのに・・・・
きぬ:誰か欠けたりしてな、そのうちに(笑<永遠に続く千腐連
フカ:ゾロ、小学生の時から変態の片鱗を見せつつ、男前です。大人になってからと一緒です。
きぬ:変態だけど男前
きぬ:男前だけど変態
玉:あ、一つ言い訳いいですか
きぬ:ダメです
玉:言い訳ー
きぬ:嘘です。どうぞ(はい
フカ:いいぜ、いってみろよ
玉:ゾロ、耳ピアス発信機になってますけど
きぬ:おう
フカ:うん
玉:最初はGPSつきのキッズケータイでした
玉:フカさんの「ゾロがケータイ持ってるっていうのが生理的に許せん」というおたっしにより
玉:発信機になりました
フカ:私のせいかよ!!
きぬ:より893ぽいくて良いのではないでしょうか
玉:フカさんのせいです
きぬ:フカさんのせいだそうです
フカ:でもだって、ゾロがドラえもん携帯とかもってるの見て、かわいいか?
玉:なんでドラえもんなんだよ
きぬ:なんでそこでドラえもん(笑
玉:ドラゴンボールだよ、きっと(笑)
フカ:ミホークの趣味だな。
フカ:どっちにしろ。(笑)
玉:うむ
きぬ:ショップでじーっと見本睨みながら選ぶんだ
フカ:どっちがよいか、とか言って、差し出すミホーク
玉:いっこいっこ、「無益」とかいいながら(笑)
フカ:お前の好きな方にするがよい、とかね
きぬ:おのれで選ぶがよい、って<差し出す
フカ:おのれ、だな。うむ。
きぬ:うむ(重々しくどうぞ
玉:でもミホーク自身は携帯使えないといいな
きぬ:わっ
玉:全部コウシロウ任せ
フカ:いいねいいねぇ
きぬ:機械類には弱くて
きぬ:DVDレコーダーも使えないから
きぬ:予約もコウシロウまかせ。
フカ:で、頼む録画はドラゴンボール?だったりして。(笑)
フカ:一度はさ、コウシロウも試させたんだよ。あの、ボタンのでかいやつ。
きぬ:とっしょり用のね<ボタンでかい
玉:らくらくほんだな(笑)
きぬ:ミホ様、使わない。
きぬ:一度も触れた気配すらなく、ビニールも箱もそのままで
フカ:一度くらいは開けたんじゃない?で、壊した。
きぬ:壊すのか(笑
フカ:開けて1分で。無益。
玉:壊したのか(笑)
きぬ:変なとこ開けようとして。無益。
きぬ:ボタン押した瞬間、携帯まっぷたつ。無益。
フカ:無益
玉:ありそうだからこわい(笑)
きぬ:無益つったら無益。
フカ:うむ
きぬ:最初っから最後まで無表情。
玉:「もうミホーク様は触らないでください」っていわれるの
きぬ:キディ・ポルノに激怒するミホーク萌え。
フカ:ミホーク、893だけどかわいいよね。なんか。憎めない感じだ
フカ:奥さん一筋だしさ
きぬ:筋の通った893は好きだ。
玉:古いタイプのヤクザだね
フカ:男にも手出してないし。そうそう、筋通ってる感じするね
きぬ:で、ミホ様ったらゾロがいらないっつーんなら
玉:ミホークの組は魁男塾みたいな感じで
フカ:もらう気まんまんなのね。
きぬ:懐刀、自分で貰いうける気まんまん(笑
きぬ:サンジが猫まっしぐらみたいにゾロまっしぐらなのを知っててそんな事言うミホ様。
フカ:ところで、懐刀としての教育って,何をしたんでしょう?>たまたん
玉:えーとなんだろう
玉:足技?
きぬ:えーとかよ(笑
フカ:足技はもちろんだけど、寝技は?
きぬ:ねっ…ねっ…(ぷるぷる
フカ:汗だく初体験のためにとっといてあるの?
玉:寝技はないですね。きよらかですね
フカ:き、、きよらか、、、
きぬ:ゾロと一緒にいられる術を考えて、それしかないということで汗だく初体験。
きぬ:きよらかさんv
きぬ:その後は淫乱大魔神。
フカ:早く続きが読みたいわねぇ。しみじみ。
玉:むしろ度を越して清らかですね
玉:ゼフがやりすぎで。
きぬ:童貞なんだ。
きぬ:や…
きぬ:りすぎ?
フカ:なにやったんだ、、、ゼフ、、、
きぬ:なんなら今から書いてくれてもかまわない<続きが読みたい
玉:えー
フカ:うむ。かまわないかまわない
きぬ:つかむしろ書け?
玉:やっと終わったとほっとしているのに(笑)
フカ:来年の千腐連に向けて書いとけ。忘れないうちに。(笑)
きぬ:書くがいい。
玉:えー
玉:とりあえず来年こそは本懐で
フカ:うむ。来年こそは本懐で。
きぬ:本懐をとげるわけね。
フカ:めでたく、来年の開催が確定しましたな。(笑)