血の深緋の烈華の如く
【 参 】
それからどうなったかと言うと、ありていに言えばゾロとサンジは仲良くなってしまった。
取っ組み合いしているところを海に投げ込まれて、がぼがぼしているところを屋敷の人間に助けられて、ひーはーひーはーしながらひっくり返って、疲労困憊のまま倒れるようにお昼寝して、目が覚めて二人でご飯を食べて、子供同士だからってんで一緒の風呂に叩き込まれて、さらに一つの部屋に布団並べて寝かせられてしまって、仲良くならないわけがないのだ。子供なんてものは。
ゾロはその家庭環境のせいで同い年の友達がいなかった。
加えて、体格も大きく、なまじ剣道が強かったので、大概のよその親達は自分の子にゾロが近づくのを嫌った。
ゾロ自身があまりそういう事を気にしないたちなのも、それに拍車をかけた。
だから、サンジは、ゾロの初めての同い年の友達になった。
ゾロとサンジは、同い年に見えないほど体格に差があった。
サンジはゾロよりも10センチも低かったし、体つきも華奢で、それこそ可愛い女の子にしか見えなかった。
だがサンジの負けん気は強かった。
腕力では劣っていたが、サンジはゾロよりも素早さで勝っていて、更に頭がよかった。
ゾロが闇雲に突っ込むところを、サンジがひらりと逃げる。
屋敷の中を逃げ回って、ゾロをひきつけておいて、押入れの中に隠れ、ゾロが来たのを見計らって、ゾロの頭の上から布団の雪崩を起こしてゾロを埋めたりした。
もちろんその後、屋敷の人間にはこってり怒られるのだが。
サンジの意表をついた攻撃は、いつもゾロの度肝を抜き、ゾロは、サンジと遊ぶのが楽しくて楽しくて仕方なかった。
「あれもあんな顔をして笑うのだな…。」
そうミホークがコウシロウに言っていたのを、ゾロは知らない。
屋敷内やら砂浜やらを二人で力の限り走り回るのも楽しかったが、二人で岩場とか押入とかに隠れてひそひそ話するのも楽しかった。
二人で色んな話をして、ゾロは、サンジがゼフの本当の息子ではないこと、去年の抗争で母親が巻き込まれて死んだこと、サンジも巻き込まれそうになったこと、ゼフが助けてくれたこと、その時にゼフが片足を切断する事故にあったこと、それが縁でゼフに引き取られることになったこと、等の話を聞いた。
母親が死んで一年しかたってない事もあって、サンジはわんわん泣きながら母親の話をした。
慰めるつもりでゾロが、「俺の母ちゃんも俺生んで死んだ」というと、サンジは今度はゾロが可哀相だと言ってわんわん泣いた。
あまりによく泣くので、蒼い目が涙で溶けて流れてしまわないかと心配になって、ゾロはサンジを抱きしめた。
腕の中のサンジはほんとにちっちゃくて、ゾロはサンジを抱き潰してしまうのではないかと心配になった。
抱きしめたサンジはちっちゃくて柔らかくていい匂いがした。
家に出入りする大人の女達の香水のにおいとは違う、もっとふわふわして優しい懐かしいにおいだった。
子供の頃、手放せなかったタオルケットのにおいに似てる、と思った。
サンジの髪の毛はまっすぐなくせに柔らかくて、顔を突っ込むと外側はひんやりしているのに内側は温かくてほわほわしていた。
そのにおいを嗅いでいたらなんだか眠くなってきて、ゾロはサンジを抱いたまま寝てしまった。
泣きつかれたサンジも、ゾロの腕の中で寝てしまった。
見つけた家人が、笑いをかみ殺しながらそうっと布団に運んでくれた後も、二人はくっついて眠っていた。
それからゾロは、しょっちゅうサンジのにおいを嗅ぐようになった。
サンジは、「なんで嗅ぐんだよう」と嫌がっていたが、ゾロはお構いなしだった。
サンジが本気で嫌がったらやめてやろうと思わないでもなかったが、サンジは、嫌がるというより恥ずかしがっているみたいで、怒らずに涙目でもじもじしているだけだったので、ゾロは、やめなくてもよし、と勝手に判断して、サンジのにおいを嗅ぎ続けた。
そしたらサンジが涙目のまま「俺、くさいか? くさいから嗅ぐのか?」ととんでもないことを聞いてきたので、その時だけはゾロは慌てて、「違う。お前いいにおいだから嗅いでる。」と弁解した。
いいにおいだから、と言われたサンジは機嫌を直したらしく、それからはゾロがサンジの傍でくんかくんかしても何も言わなくなった。
そのうちゾロは、サンジのにおいを嗅ぐと自分の体が変になることに気がついた。
どうしてだか、ちんこが硬くなるのだ。
今までにもちんこはよく勝手に硬くなったりした。
朝起きてトイレに行くと大概いつも硬くなってる。
剣道の試合ですごく強い相手に勝てた時もちんこは硬くなったし、ミホークの組織の構成員の女がふざけてゾロの体をくすぐりまくった時も硬くなってた。
だからゾロにとってそこは“何でだか知らないけど勝手に硬くなったりするところ”だったのだが、どういうわけか、サンジのにおいを嗅いでいてもそこは硬くなるのだ。
しかもほぼ毎回必ず硬くなる。
硬くなったちんこは、なんだかうずうずする。
いつもなら硬くなったちんこは揉めばいいとわかっている。
揉み揉みすると気持ちよくて落ち着くし治まるのだ。
だけどさすがにサンジのにおいを嗅ぎながらちんこを揉むのはなんかイケナイコトのような気がする。
だからゾロはサンジのにおいを嗅ぎながら、自分の股をサンジの尻の辺りに擦り付けたりしていた。
感触はもどかしいが、なんだかじぃんとしてそれはそれで気持ちがいい。
おかげですっかりゾロの中で「サンジのにおい」と「気持ちいい」は直結してしまった。
けれど、そんな事がサンジにばれないはずはない。
「なんでにおい嗅ぐ時俺にちんこ押し付けるんだ」から始まって、「ゾロのちんこ硬くなってる。どうしたの、それ」になって、「触ると気持ちいいんだ」なんて答えちゃって、気がついたら、二人でお互いの性器を弄り合ったりしてしまっていた。
サンジのちんこはゾロのと色が違っていて、ピンクでぷるぷるしていた。
同い年の友達のいないゾロは、同世代の子供の性器を見るのはこれが初めてで、思わずまじまじと観察してしまった。
ゾロがそれに触ると、サンジはびくんびくんと体を震わせる。
同い年とわかっているのに、サンジの幼く見える顔は、ゾロにちっちゃい子にイケナイコトをしている錯覚を抱かせた。
青空の下で見るサンジの瞳はいつでも青空と同じ色で透き通っているのに、部屋に篭ってこんな事をしている今は、蒼はずっと色を濃くしてうるうると潤んでいる。
陽光の下で見るサンジの目はきっとソーダ味だろうと思っていたのに、今の目はもっとずっと甘そうで、ゾロは舐めてみたくて仕方なくなった。
一度舐めてみたいと思ってしまったら、もうサンジのどこもかしこも舐めてみたくなった。
白くてふにふにしたほっぺたを齧ったら、サンジは泣くだろうか。
耳たぶくらいは噛んでもいいんじゃないだろうか。
くちびる、には…?
「ぞ、ろ…?」
「サンジ、くち…舐めてもいいか…?」
「えっ?」
「唇…、ちゅーしてもいいか…?」
「え、だめ、だよ…。」
「なんで。」
「だって唇にちゅーはコイビトとするんだよ。おかあさんが言ってたもん…。」
「んなら、コイビトになればいいんだろ? なぁ、ちゅー。」
「こい、恋人、に、なる、のか? ゾロと俺…?」
「んだよ。やなのかよ。」
「や、じゃねぇ、けど、でも、」
「でも、なんだよ。」
「男…同士で、恋人になれるのか…?」
「なれるだろ。んだ、ゼフんとこにはそういうのいねぇか?」
「そう、いうの、って?」
「男の嫁さんもらってる奴。」
「え、ゾロのとこはいるのか?」
「たまにいる。“男のイロ”持ってる奴。ムショデオトコノアジオボエテカエッテクル奴に多いって。」
ゾロの知識はだいぶ偏っている。
しかも覚えたまま口にしているので、自分でも半分くらい意味がわかっていない。
だがとりあえず、恋人と“イロ”が同義語である事は何となく知っていた。
サンジもゾロの言った事はよくわかっていないが、難しいことを言い出したゾロに、単純に感心している。
「ようはあれだ、好きあってりゃいいんじゃねぇの?」
「えっ…」
サンジが目を丸くしたので、ゾロは反射的にむっとした。
「俺のこと好きじゃねェのかよ。」
「す、好き! おれ、おれ、ゾロ好きだ!」
勢い込んで言われて、今度はゾロが目を丸くする。
「ほんとか?」
「ほ、ほんと。ゾロは…? ゾロ、も…?」
「うん。サンジが好きだ。」
初めて言う“好きだ”は何だかくすぐったくて、ゾロとサンジはお互いが好きだと言い合った後、思わずうへうへ笑ってしまった。
もちろん、ちゅーもいっぱいしたし、お互いのちんこもいっぱい触りあった。
精通、なんて言葉も知らないほど子供だったけれど、サンジのぴんぴんに尖ったちんこを触るのも、さんじのちっちゃな手で自分のちんこを触られるのも、すごくすごく気持ちがよかった。
次の日、ゾロは泣きじゃくるサンジの声で目が覚めた。
仰天して飛び起きると、サンジが泣きながら縋りついてきた。
どうしたのかと聞くと、ぼろぼろ涙を流しながら、サンジは小さな声で「ちんこ痛ェ…。」と言った。
弄りすぎたのだ。
ゾロのちんこは痛くなかったが、サンジの方がゾロより敏感肌か、或いはゾロが乱暴に触りすぎたのだろう。
大事なところのありえない痛みに、サンジは心細げに泣き続ける。
自分のちんこなら多少痛くても我慢すりゃいいや程度なゾロも、それがサンジのちんことなると盛大にうろたえた。
だがこんなこと、ゼフにもミホークにも言えるわけがない。
「とにかく見せてみろ。」
と、ゾロはサンジのパンツをおろした。
サンジのちんこは昨日見たときと変わらず、可憐なピンク色で、見た目にはどこもおかしいところがない。
「触ると痛ェか…?」
心配して聞きながら、ゾロは指でそのピンクをつんつんとつついた。
ピンクのちんこが本体ごとぷるぷるっと震える。
「や、めろよぉ…っ…」
サンジが情けない声を上げた。
「痛いのか?」
「痛くは…ねぇ、けど…。」
痛くない、と聞いてゾロはほっとする。
「ヘソとかいじくりすぎっと腹痛くなるからな。そんなんだと思うけど。」
ゾロがそう言うと、サンジはくるくる眉毛をへにゃんと下げた。
「そ、そっか。」
安心したらしい。
「念の為、綺麗に洗っとくか。」
ゾロは、サンジを連れて浴室に行った。
この屋敷は広くて人も多いので、浴室も複数ある。
センゴク、ミホーク、コウシロウは客間に泊まっていて、客間の浴室を使っていたが、ゾロはサンジの部屋に泊まっていたので、サンジとゼフが使う家族用の浴室に入っていた。
もはや勝手知ったるとなったその浴室に、ゾロはサンジを連れていく。
二人で裸になって浴室に入る。
ゾロはシャワーを出して、熱すぎないように湯温をぬるめに調整してサンジの下半身にかけた。
「んっ…!」
サンジの体がびくりと震えたが、嫌がらずにじっと耐えている。
「痛いか?」
ゾロがそう聞くと、サンジはぷるぷると首を横に振った。
恥ずかしいのか、その顔は真っ赤だ。
心なしか、体全部がピンクに染まっているように見える。
石鹸を使ったら沁みて痛いかもしれない、と思ったゾロは、シャワーだけでサンジのちんこを丁寧に丁寧に洗う。
サンジのちんこを摘んで、そうっと皮を剥くようにして、シャワーをかける。
「っ、ふ…、ぁ、ぞろ…、」
「痛いのか?」
「い、たくは、ないっ…けどっ…」
「くすぐってぇか?」
「ん、んんっ…!」
うん、なのか、ううん、なのか、よくわからない返事をして、サンジはぎゅっと目をつぶった。
こんな可愛らしい反応をするから、ゾロがついつい弄りすぎてしまうというのに。
サンジのちんこは、もうかちかちになっている。
それをゾロは乱暴にしないように優しく優しくぬるま湯で洗った。
不意に、
「ふああッ…!!」
びくんびくんとサンジの体が痙攣したみたいに大きく揺れた。
「サンジっ?」
驚いたゾロがサンジのちんこから手を離す。
サンジががくりと膝をついた。
「どうした?サンジっ!」
抱き起こそうとすると、サンジはぎゅうっとゾロに抱きついてきた。
「どうした? どっか痛ェか? 大人呼ぶか?」
ゾロが慌ててサンジを抱きとめながら聞く。
サンジに何かあったらどうしよう、とゾロは焦った。
だがサンジは、
「ちが、ちがう、よばなくてい…」
とくぐもった声で答えた。
「だれも、よばなくてい、から、ぎゅってしてて、ぞろ…」
微かにろれつの回らない、幼い口調でそう言って、サンジはますますゾロに抱きついてきた。
わけがわからないながらも、ゾロは、しっかりとサンジの体を抱きかかえた。
裸で抱き合うと、ゾロの全身にサンジの濡れた肌が密着した。
心臓が壊れるかと思うほど、どきどきした。
「なんか…いま…」
ようやっと、掠れた声でサンジが言った。
「ゾロに触られてたらなんか、…なんかな、ちんこが…じんじん、した。」
秘密を打ち明けるようにゾロの耳元でそう囁いて、サンジはふにゃんと笑った。
2007/02/24