『かさぶた。』
【6】
小さな孔が限界まで広がって、ゾロの怒張したモノを飲み込んでいく様を、ゾロは信じられないように見つめた。
こんな小さなとこに、こんな凶悪なものが、ずぶずぶと沈んでいく。
恐ろしいくらいの快楽を、ゾロに与えながら。
こんなに、心も体も全て、何もかも持っていかれるようなSEXを、ゾロは今まで知らなかった。
抱いているのに、抱かれているような、SEXを。
とんでもなく、気持ちいい。
「ヒ! あ あ あ あッ… あーっ…!」
サンジが悲鳴なのか嬌声なのかわからない声を上げる。
けれど、やめろ、とだけは言わない。
精一杯足を開いて、腰を浮かせて、ゾロを受け入れてくれている。
愛しい、と思った。
愛しくて、可愛くて、綺麗だ。
ガラが悪くて、態度も悪くて、口も悪くて、足癖も悪い。
おまけにかさぶたフェチだ。
そんでとんでもなく優しくて、とんでもなくエロい。
やべェな、とまた思ったが、もう焦るような気持ちはなかった。
やべェな、は、惚れちまったな、だった。
全部、好きだと思った。
なんだかもう、心の中のあちこちがくすぐったくて仕方がない。
このまま海に飛び込んで、自力でグランドラインを泳ぎきれそうな気すらした。
抽迭を始めると、サンジの体がのけぞった。
苦しいのだろうが、その喘ぎは壮絶にエロい。
「ああっ… んんぅ… っあ… イ…ッ!」
すぐにでも射精しそうになり、ゾロは咄嗟に天井を向いて背筋のぞくぞくをやり過ごした。
いくらなんでも、こんなに早く出しちまったら、男の沽券とか股間とかにかかわる。
死ぬ気で耐えた。
だが、あまりの気持ちよさに、腰は勝手に動く。
「あ、ゾロ… ゾロぉ… ああッ…」
サンジが甘い声でゾロの名を呼んでいる。
すごく嬉しいのだが、今はやめてほしい。
ダイレクトに耳から刺激されて、イッてしまいそうだ。
つか、たぶん、もう、少し出てる。きっと。
さっきから抽迭がやたらぬるぬるとスムーズで、やたらと気持ちいい。快楽の波に溺れそうだ。
「お、前…さ、」
切れ切れの息の下から、サンジが何事か言い掛ける。
「そん、で…、俺の、返事は…聞、かなくていいのか?」
見下ろすと、サンジは、苦しそうに眉根を寄せながらも、その口元は薄く微笑んでいる。
あー、と、ゾロはちょっと肩を竦めた。
「ホモでもねェ、女好きのてめェが、俺に体開いてくれてんだ。嫌い、ってこた、ねェだろ?」
ちょっとくらいは好きだろ? 等と剣豪らしくもない弱気なことをうっかり口走ってしまい、それを聞いたサンジは、ゾロに串刺しにされたまま、くくっと小さく笑い声をたてた。
腹筋に力が入って、きゅ、とゾロを咥え込んだそこが締まる。
ゾロはまた慌てて天井を向いた。
だからやべェって。
「だいたい、」と、ゾロは天井を見たまま続ける。
「てめェはかさぶたフェチだろ。もしてめェが俺を嫌いっつうんなら、俺のかさぶたはもう二度と剥がさせねぇ。胸のかさぶた、いい感じだぞ。足もすげぇ。怪我はもう治った。かさぶたんなってる。剥がしてみてぇだろ? でもてめェが俺を嫌いなら剥がさせねぇ。かさぶた剥がせねぇと、てめェ困るだろ? 剥がしてぇだろ?」
一気にまくし立てた。
サンジは、呆気に取られた後、ついにけらけらと笑いだした。
もう、涙を流さんばかりに笑っている。
「そ、そうだな。くくっ…。剥がせねぇと困るな。てめェのかさぶた、また剥がしてぇ。」
笑いながら、それでも優しく、その指がゾロの頬を撫でた。
その仕草に、完全にやられた。
ゾロは、やおらサンジの腰を掴むと、一気に腰を動かし始めた。
「────んあッ! あ、アァ!」
サンジが嬌声を上げた。
もうゾロには余裕などない。
サンジの一番奥をめがけてがんがんと突きこんでいく。
体が芯から熱くなり、その熱に耐えられなくなって、シャツを脱ぎ捨てた。
刹那、サンジが眩しそうに目を細める。
あの神経質そうな指が、すっ、とゾロの傷口に触れた。
「こ、れ…っ…」
喘ぎながら、言葉を紡ぐ。
「これっ…、俺、だけ…っ…」
「…あ?」
不意に、ぐいっとゾロの体はサンジに抱き寄せられた。
その弾みにサンジの奥を抉ってしまい、サンジがまた喘ぎ声を上げる。
それでもゾロを抱き込んで、
────これ、俺だけのもん、な?
と、掠れた声で囁いてきた。
その瞬間、ゾロの目が、くわっと見開かれ、ゾロのモノが、サンジの一番奥で、弾けた。
気持ちよかった。
今までで一番気持ちのいいSEXだった。
身も、心も。
こいつはもう二度と手放せねぇ。そう思った。
きっとこの先、サンジ以外誰も愛せない、とすら。
射精後の気だるさまでもが心地いい。
かつてないほどの充足感を覚え、余韻たっぷりに、ゾロはサンジの体を抱き寄せた。
やっと手に入れた。
愛しくて愛しくてたまらない存在。
力いっぱい抱きしめると、サンジが呻いた。
「ゾロ…痛ェ…。」
ハッとして力を緩めるゾロ。
サンジが、肋骨を折った事を忘れていた。
体を離すと、白い肌に巻かれた白い包帯が目に入る。
痛かった。
とんでもなく痛かった。
自分の怪我は全然痛くないのに、サンジの怪我はどうしてこんなに痛みを感じるのだろう。
ゾロは、サンジの胸元、巻かれた包帯の上に、顔を寄せた。
もう、こんな怪我するな、と言いたかった。
もう、誰も庇うな。
この体に傷一つつけるな。
だが、それを言えば、サンジは一笑に付すだろう。
だから、ゾロはこう言った。
「てめェの傷がかさぶたになったら、俺に剥がさせろ。」
するとサンジは、ふわりと、柔らかく微笑んで答えた。
「やだ。」
俺のかさぶたは俺のもの。
てめェのかさぶたも俺のもの。
かさぶたフェチ、ナメてんじゃねぇぞ? クソダーリン。
それはもう綺麗な笑顔だった。