SHERIL


 

その黒衣の女が、男達の目にとまるようになるのに、それほど時間はかからなかった。

いつの頃からか、その女は人々の集まるパブで働いていた。

「しかしいい女だな。」

常連客達が数人、店の隅でテーブルを囲みながら、その女を見ていた。

「こんな田舎の酒場には、そぐわないほどの…な。」

最初に言った男とはまた別の男が、そう言った。

彼らの目は、カウンターの中で洗い物をするその女に吸い寄せられている。

漆黒の髪、漆黒の瞳、病的に白い肌…。

美しい顔立ちをしているのに、いつも虚ろな眼差しで、ろくに口も聞かない、ミステリアスな女…。

「あれで、もう少し愛想がよければ言う事はないんだが。」

「いや、あの陰のある風情が、色気があっていいじゃないか。」

常連客達は、無遠慮な視線を、その女に絡めながら、その女の噂話を酒の肴にしていた。

彼らのテーブルに、マスターが新しい酒を運んできた。

常連客達の中の一人が、マスターに尋ねた。

「マスター、ありゃいったい、どういう女なんだい?」

マスターは曖昧に笑って答えてはくれなかった。

何の事はない。マスター自身も、その女が何者であるか、知らないのだ。

その女は、ある日突然ふらりと店に現れた。

「シェリル」と女は名乗った。

それ以外、女は何も語ろうとはしなかった。語る言葉を持っていないようであった。

自分が何者であるのか、何処から来て何処へ行くのか、名前以外の一切の記憶は失われているようであった。

シェリル、というその名も、女の本当の名ではないのかもしれない。

「なんだってこんなところで働いてるんだか。」

「金に困ってるようでもないしなぁ。」

「それどころか、見ろよ、あの指をよ。」

シェリルの指には、大粒のダイアモンドの指輪が光っている。

「まるで、伝説のデステニィストーンの如き輝きじゃないか。」

「あれを売りゃあ、けっこうな値になるぜ。」

「こんなところで働く必要なんかねぇのにな。」

「あ〜あ〜…。いい指輪をしてるのに、あんな水仕事なんかして…。」

シェリルは、指輪が傷つくかもしれない、等という事は、まるでどうでもいいかのようであった。無造作に洗い桶の中に手を突っ込み、がちゃがちゃと皿を洗っている。

「どこかのいいとこの娘なんじゃないのかね」

「…そうだなぁ。あんなに無愛想なのに、どこか品があるんだよな。」

「俺らとは人種が違う感じがするわな。」

シェリルは、洗い物を終え、カウンターから出て、マスターに指示されるまま、客達に酒や料理を運び始める。

相変わらず、無表情のままだ。

まるで、人形のように生気のない顔。

そうしていると、際立った美貌がよくわかる。

店中の男達の視線が、彼女が歩くのにつれて、動く。

男達のあからさまな好奇の視線に、気づかぬはずはないのに、シェリルは、まるで意にも介さず、黙々と料理を運んでいる。

「…あんな女と一度でいいからヤってみてぇなぁ。」

「意外と好きモノだったりしてな。」

「あの口に突っ込みてぇ・・・。」

「乳も意外とでかそうだぜ。」

次第に、常連客達の間に、おかしな空気が流れ始めていた。

「あんな美人のまんこの味はどうだろうな」

「俺のでかいのを後ろからぶちこんでも澄ました顔ができるかな」

明らかに常軌を逸した熱気が、常連客達を包んでいた。

客達自身は、自分達を侵す異様な気に、気がつかない。

だしぬけに、別のテーブルの客の一人が、ふらりと立ち上がった。

足元がおぼつかないほどに酔っている。

いや、酔っているふりをしているだけか?

酔客は、ふらつく素振りを見せて、いきなりシェリルに抱きついた。

店中の注目が集まる。

しかし、シェリルは冷ややかな目で酔客を眺めたまま、その手を振り解こうともしない。

図に乗った酔客は、彼女の胸を鷲掴みにした。

豊かに大きな乳房が、酔客の手の中で柔らかく変形する。

黒衣の胸元が乱れ、鮮やかに白い乳房の谷間が一瞬、垣間見えた。

が、彼女はただそれを黙って見ていた。

そのあまりの無反応さに、逆に酔客はたじろいだ。

バツが悪そうに、手を離す。

シェリルは、何事もなかったかのような顔をして、カウンターに戻っていった。

だが、常連客達の目に、今しがたの光景が焼きついていた。

黒衣から覗いた、真っ白な肌のコントラストが。

「どうだい。あの態度は・・・」

「何が上品なもんか・・・」

「相当に男慣れしてやがるぞ・・・」

声を顰めて話す常連客達の目には、欲望に満ちた狂気が宿っていた。

 

客達のそんな様子を、じっと見ていた者がいた。

先刻から店の隅で歌っていた吟遊詩人だった。

吟遊詩人は、手に持った竪琴の弦を、そっと一つ、弾いた。

るん、と流麗な音がした。

「封じられていても、人の心から負の感情を引きずり出すか…闇の女神よ…」

そのつぶやきはあまりにも小さくて、誰にも聞こえなかった。

吟遊詩人がその時どんな顔をしていたかも、誰にも見えなかった。

 

◇ ◇ ◇

 

その夜は闇夜だった。

月は姿をあらわさず、満点の星明りだけがほのかに闇を照らしていた。

シェリルは店を出て、闇の中を歩いていた。

女の一人歩きだというのに、闇が恐ろしくはないようだった。

不意に、シェリルの背後から手が伸びた。

かと思うと、その手がシェリルの口を封じ、次々に伸びた手が、シェリルの腕を掴み、髪を掴み、服を掴んで、彼女はあっという間に人気のない、町の片隅へと連れ込まれた。

ふわり、と、後にはシェリルのしていた黒のショールだけが冷たい石畳に落ちた。

「誰にも見られなかったか?」

「見えやしねえよ、こんな闇夜じゃ。」

押し殺した声がした。

「へ…へへ…やっちまった…」

「ばーか。犯っちまうのはこれからなんだよ…。」

そんな言葉を聞いても、シェリルは顔色一つ変えなかった。

能面のような無表情のままだ。

声の主は、あの、パブの常連客達だった。

シェリルは、男達の手によって、冷たい地面へと引き倒される。

シェリルが特に抵抗する様子もなく、なすがままなのを見て、男達の間に下卑た笑いが広がった。

「悲鳴一つ上げやしねぇ。たいした女だぜ。」

「逆らうより一緒に楽しんだ方が得だって分かってるのさ。なぁ?」

男の一人が、なれなれしくシェリルの顔に口元を寄せた。

その美しい頬をべろり、と舐め上げる。

それが狂宴の始まりだった。

 

 

男達の手が、寄ってたかってシェリルの服の胸元を掴む。

絹地の裂ける鋭い音がした。

黒衣が裂け、闇の中に、青白いほどに白い肌が鮮やかに浮かび上がる。

あらわになった乳房に、ごくり・・・と、男達が生唾を飲む。

たまらず、男の一人が、シェリルの乳房にむしゃぶりついた。

それはまさしく、男達が今まで抱いたどの女よりも“上等な”肌の感触だった。

「ああ・・・たまんねえ・・・」

力任せに乳房を掴むと、指の間から、柔らかな肉がむにゅりとはみ出た。

男はそのままぐにゅぐにゅと乳肉をこねくり回し、その感触を楽しむ。

いつまででも触れていたいような、すべすべとしたなめらかな肌に、男は夢中になった。

「おい…、早くしろよ。後がつかえてるんだよ。」

「へへへ…。まあ、そう言うなって。」

シェリルの乳を揉んでいる男はそう言って、今度は、硬く尖った乳首をべろべろと舐め回す。

別の男が、シェリルの股間に手を伸ばす。

裾を捲り上げ、下着をずり下げる。

そこは、しとどに濡れて、熟れた女の匂いを放っていた。

「濡れてるじゃねぇか・・・」

男は歓喜に満ちた声でそう言うと、その濡れた女陰に指を突っ込んだ。

じゅぶじゅぶと愛液が指に絡みつく。

ここに己の肉棒を捻じ込んだらどれだけ気持ちがいいだろうと考えただけで股間が暴発しそうだった。

「ちくしょう、我慢できねえ。」

男は、己のいきり立った肉棒を取り出すと、シェリルの濡れそぼつ秘所に突き入れた。

「うぉっ…」

挿れるなり、男が呻いた。

「この女… すげぇ、イイ…!」

濡れた蜜壺は、うねうねと蠢きながら、男の陰茎を吸い込み、締め付けていた。

抜き差ししようとすると、ざらついた膣壁にひっかかり、熱い蜜にからめとられ、尚も中へと吸い込まれる。

男は貪るように夢中で腰を動かした。

「うう… もう出ちまうッ…!」

びゅくっ びゅくっ びゅっ どびゅぅっ

「馬鹿野郎、中に出す奴があるかよ。」

早漏はえぇなぁ。へっへっへっ」

びるっ びゅびゅっ びゅくっ びゅっ・・・・

「おいおい、いつまで出してやがんだよ。」

男はずいぶん長く射精していた。

目は焦点を失い、半開きになった口からは涎が垂れていた。

ようやっと男はシェリルから離れると、そのままよろよろと2、3歩後退し、躓いて、どさっと尻餅をついた。

視線は朦朧としたままだ。

明らかに異常な様子に、男達の一人が、「おい、どうした?」と声をかけた。

尻餅をついた男は答えない。

すると別の男が、

「ほっとけ。よっぽど良かったんだろうよ。」

と言って、シェリルを見下ろして舌なめずりをした。

最初に声をかけた男も、すぐにシェリルに向き直る。

シェリルの淫裂からは、ごぽっと音を立てて、男の放った精があふれている。

「ち…。後の事も考えず出しゃあがって。」

「構うもんか。ぶち込んじまえ。」

シェリルの体が引き起こされ、四つんばいにされる。

待ちきれぬように、次の男がシェリルの尻を持ち上げ、後ろからシェリルの秘裂に剛棒を捻じ込んだ。

その男も、激しく腰を使い出す。

「どうだ? そんなにイイか?」

別の男が聞く。

「あ…あ、確かに…イイ…。た、魂まで吸い込まれそうだ…。」

それを聞いて、男達の喉が、ごくりと鳴る。

別の男が、焦れて前に回り、シェリルの口に、己の逸物を無理矢理突っ込んだ。

抵抗する様子もなく、ぴちゃぴちゃと淫猥な音をたて、男のモノをしゃぶり始めるシェリル。

「へっ… たいしたスキモノだぜ・・・ おぉ…っ!」

その巧みな愛撫に、男の腰が思わず震える。

別の男たちも手を伸ばしてシェリルの乳房を弄ったり、菊座に指を突っ込んだりし始める。

饗宴にあぶれて自分で自分の股間をさすりだす男もいる。

やがて、

「だ、出すぞぉぉぉぉぉ」

膣を犯していた男が吼えた。

「うおぁおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「あ、おい! 中に出すなって!」

「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・」

聞く耳もたぬといった様子で、この男もシェリルの中に子種を吐き出した。

「出るぅぅぅぅ… 全部出ちまうぅぅぅ・・・・」

シェリルに口で奉仕させていた男も、絶頂を迎えていた。

異常なほどの勢いで、精液が迸る。

シェリルはそれを口腔で受け止め、ごくごくと嚥下した。

「ぜ、全部…全部飲めよ…。中に残ってるのも全部吸い尽くすんだ…っ」

膣を犯していた男も、口を犯していた男も、長々と射精し、何もかも出しきると、最初に射精した男と同じように、恍惚と、魂が抜けたようになってしまい、腰が抜けたようにへたり込んでしまったが、もう誰も、そんな事に気を向けるものはいなかった。

ただ、一刻も早く目の前の快感を得ようと、シェリルの体を思い思いに犯していった。

月の射さない闇夜の中、男達の狂宴はいつ果てるともなく続いていった…。

 

◇ ◇ ◇

 

その日以来、シェリルはパブに姿を見せなくなった。

町からも、ふっつりと姿がなくなった。

常連客達もまた、あの日から一人としてパブに来る者はなかった。

 

◇ ◇ ◇

 

それから数日後、町では、突然 発狂する者が相次いだ。

彼らはやがて、3日3晩、腸を嘔吐し続けて、苦しみながら死亡した。

事態を重く見たローザリア王国では、クリスタルシティから調査団が派遣され、死の原因が、近年ローザリア王国に出回るようになった麻薬による中毒死である、との報告がなされた。

死亡者が全員、この町の唯一のパブの常連客であったため、店の主人と麻薬との関係が厳しく取り調べられたが、何も手がかりは得られなかった。

このパブで働いていた女性の行方が分からなくなっており、この女性が麻薬と何らかの関わりがあると見て捜査されたが、突然、その捜査はローザリア王国カール・アウグスト・ナイトハルト皇太子の意向により中断された。

ナイトハルト殿下と、当該の女性、そして麻薬との因果関係は不明である。

 

その麻薬の名は、「シェリル」と言った。

END.


◆◆ あとがき ◆◆

舞台はウロのつもりで書いています。
シェリルという麻薬の事と、パブの常連客が謎の死、というあたりは、「大事典」の設定をそのまま踏襲しています。




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