2015/11/04

※プロットのみで作品はありません。このプロットは息子にあげました。これは備忘録です。ゾンビ化の過程と「活性死者」という呼称などはバイオハザードの設定に準拠しています。

AGHARTA

登場人物

• 兄
  • 消防団２１３分団２番員
  • アンデッドウィルス抗体保持者
  • 独身
  • シスコン
• 妹
  • アガルタ・α地区マスター
  • アンデッドウィルス抗体保持者
  • 既婚。夫と娘あり

世界観

• バイオハザード５とか６とか辺りみたいな、世界各地でアンデッド（ゾンビ）が局地テロ的に発生するのが恒常的になっている世界。
• アンデッドはアンデッドウィルスによって引き起こされるため、この世界ではインフルエンザ等と同じ、急性感染症に認定されている。
• アンデッドは他害によって感染者を増やし、爆発的に被害を拡大させるため、国軍や警察では対応が間に合わないことが多々あり、自治体の多くが消防団を対アンデッドのための自警団としている。
• 人類の中には、アンデッドに感染しない体質を持つ者が存在し、その多くは選民意識を持っている。

アンデッド (Undead)

この世界における、アンデッドウィルスを病原体とするウィルス性の人獣共通感染症、及び、感染した患者の名称。

• 概要
  • 「アンデッド」とは死にきっていない（死者でも生者でもない）者の意味。
  • かつては「ゾンビ」と呼ばれていたが、差別的な呼称であるとして、「アンデッド」という名称に改められた。
  • 「アンデッド化」すると助かる見込みがないだけでなく、他害行動により被害を拡大させるため、迅速な対応が必要。
• アンデッドウィルス (Undead virus)
  • 非常に強い毒性を持ち、ワクチン未投与での死亡率は１００%。
  • 潜伏期間も短く、感染すると約２４時間以内に前駆症状が現れる。
  • 前駆症状までにワクチンを接種すれば、90%以上の発症阻止効果があると言われている。
  • 予防接種も有効だが、アンデットウィルスワクチンの抗体は時間と共に減弱化するので、定期的な接種が必要になる。
  • 稀に、体内に完全なアンデッドウィルスの抗体が出来る人間もいる。→アンデッドウィルス抗体保持者
  • ワクチンを投与しても発病する人間もいる。
• 感染経路
  • 人獣共通感染症(direct zoonosis)であり、全ての哺乳類と鳥類に感染する。
    • 爬虫類、両生類、魚類、植物への感染は確認されていない。
  • ヒト→ヒトのみならず、動物→ヒト、ヒト→動物にも感染する。(Amphixenoses)
  • 多くは噛まれるなどして感染する。傷口や目・唇など粘膜部を舐められた場合も危険性が高い。
  • 引っかかれて感染したという例も報告されている。
  • 空気感染はしない。
• 初期症状
  • 悪寒、発熱、頭痛、めまいなど、風邪に似た症状が見られる。
  • この時点までにワクチンを投与すれば、高い確率で治癒する。
    • そのため、アンデッドと接触した後は、素人判断せず、迅速に最寄の医療機関で受診し、ワクチンを投与すべきである。
• 中期症状
  • 大脳新皮質の壊死が始まり、記憶力の低下、代謝の異常による食欲の増大を引き起こす。
  • 食欲が増加するため、患者は病気が治ったと勘違いしてしまうが、実際は食欲増加が出てきたときには既に手遅れになっている。
  • 代謝も促進するため、自覚としてはむしろ体調はよいと感じる。
  • アンデッド化直前には強い全身の痒みに襲われる。
  • この頃には判断力も低下しているため、蚯蚓腫れになるほど掻き毟ってしまう者もいる。
  • まだ外見に変化がなく、低下しつつはあるものの知能を保っているため、それなりに正常な受け答えができる。
  • そのため、アンデッドに罹患していると周囲の人間が気づかないことも多い。
  • 病理的には手遅れであり、この段階までくると、ワクチンを投与してもほぼ100%助かる見込みはない。
  • アンデッド特有の驚異的な治癒力はまだ発現していないため、このアンデッド化前の段階で殺処分するのが一番被害が少ない。
• 末期症状
  • ある日突然「アンデッド化」する。
  • 知能の低下と代謝促進から来る異常な飢餓感のため、感染者は食欲を中心とした本能的行動をとるようになる。
  • 具体的には、凶暴化して、生きている人間を捕食するために見境なく襲うようになる。
  • 見た目にもはっきりアンデッドだとわかるほど形相が変異する。
  • 医学的にはこの段階で｢死亡」と認められ、「患者」ではなく「活性死者」と呼ばれる。
  • アンデット化後は死体扱いとなるため、アンデッドが何日「活動」を続けようが、行政的にはアンデッド化した日が命日として記録される。
  • アンデッドは既に死んでいるため、アンデッドを殺害しても、アンデッドの「活動を停止」させただけという扱いになり、罪には問われない。
  • アンデッドに噛まれた人間は、アンデッドウィルスに感染し、新たなアンデッドとなって被害を拡大させる。
• 特徴
  • アンデッドは再生能力が高く、腕一本切り落とされても再生し、「活動を停止」しない。
  • ただし、再生した腕は人間のものとはかけ離れている。
  • 再生を繰り返せば繰り返すほど、生来の姿を失い、化け物と呼ぶにふさわしい異形と変わり果てる。
  • 異形になればなるほど、脳もアンデッドとしての再生をするので、「生前」の記憶を有していてもそれはどんどん失われていく。
• 対処
  • 初期症状までにワクチンを投与すれば治癒率は高いが、中期以降のワクチン投与は無効。
  • 中期以降の患者は確実にアンデッド化するため、殺処分するしか対処方法はない。
  • アンデッド化すると殺処分が困難になるため、中期のうちに対処するのが望ましい。
  • アンデッドはなかなか「死なない」ため、頭部を破壊するか、体内のウィルスを完全に「殺菌」する特殊な弾丸を致死量に達するまで撃ち込む。
  • 対アンデッド特殊部隊の持っている銃には、体内のウィルスを完全に「殺菌」する特殊な弾丸が籠められている。
  • 体内のウィルスが死滅するとアンデッド本体も活動を停止（=死亡）する。
  • その後、特殊部隊により、エリア一体の封鎖、除菌処理が行われる。
• 予防
  • 予防接種による予防が可能なため、全ての国民に予防接種が義務付けられている。
  • 第一回の開始時期は生後２ヶ月から生後７ヶ月の間。
  • その後、年一回の定期的な接種を死亡するまで続ける。
  • 外傷後、２４時間以内にワクチンを接種すれば感染はほぼ防ぐことが出来る。
  • ごく稀にワクチンによってアンデッドウィルスに感染する例が確認されている。
  • 免疫不全の者、発熱や基礎疾患を有していることが明らかな者、過去に予防接種でアレルギーを起こした者などは接種できない。

アンデッドウィルス抗体保持者

• アンデッドウィルスに対する、完全な抗体を保持している者のこと。
• アンデッドウィルスが体内に侵入してもウィルスに感染しない。
• アンデッドウィルスの免疫は体内で作られにくく、抗体ができても時間と共に失われていくが、稀に、一度の予防接種で、体内のアンデッドウィルス抗体が完全に安定し、減弱化しない体質の者がいる。
• 生後最初の予防接種で抗体が固着する者もいるが、成人後の予防接種で突然固着する者もいる。
• 抗体が体内で完全に固着、安定すると、その後の予防接種は必要なくなるが、固着したように見えて長い時間をかけて減弱する者も存在するので、定期的に血液検査することが望ましい。
• ウィルス抗体保持者の妊婦からは、先天的なウィルス抗体保持者が生まれる場合がある。
• 両親ともにウィルス抗体保持者の場合は、更に高い確率で生まれつきウィルス抗体保持者が生まれる場合がある。
• ウィルス抗体保持者の多くは、「こんな素晴らしい体を神様からもらえる私達はきっと特別な存在なのだ」と感じているものが多い。（ヴェルタースオリジナル）
• アンデッドウィルスに感染しないため、渡航の自由などいくつかの特権が認められている。
• 特権階級であるため、それを生かした特殊な職業についている者がほとんど。
• 特別な存在なのだから、特別でない哀れな存在を守ってあげなければいけないという意識から、対アンデッド特殊部隊に入隊する者や、一般民保護区「アガルタ」の管理者を勤める者もいる。
• その一方で、一般民に対して差別意識を持って蔑んでいる者もいる。

一般民

• アンデッドウィルス抗体を持たない人間のこと。
• 抗体を持たないために定期的な予防接種が必要であり、渡航や居住などに制限がかけられている。
• 「弱く可哀相な存在」であるため抗体保持者達からは保護対象とされているが、そもそも感染してしまう一般民さえいなければ被害は拡大しないため、ウィルス抗体保持者の中には、一般民を駆除するべきという過激な思想を持つ者もいる。
• ウィルス抗体保持者の中には、「アンゾンビ」という蔑称で呼ぶ者もいて、近年問題になっている。
  • アンゾンビ、つまり、「まだゾンビになっていない者」の意味で、「どうせ行く末はゾンビだろ」という蔑みが籠められている。

消防団

• 各市町村などの自治体が持つ対アンデッド機関。
• その名の通り、元々は地域の消防団が自警団化したもの。
• 自治体によって規模や活動内容が異なるが、特化したところでは軍隊系特殊部隊並みの強さを誇る。
• 消火、予防、救急、救助といった通常の消防活動に加えて、警ら、治安維持といった防犯活動、そしてアンデッドの殲滅、アンデッドウィルスの除去を行う。
• 感染の危険を伴う任務であるため、ほとんどが抗体保持者で構成されている。
• アンデッドの体内のウィルスを完全に殺菌する事のできる特殊な弾丸がこめられた銃を装備している。
  • その銃で「殺菌」されたアンデッドは当然死亡する。
• アンデッド化してから殺処分すると、遺体は異形の姿のままになるため、なるべく発症前に殺すのが望ましい、という独特の価値観を持っている。
  • 初期症状のうちにワクチンを投与しないと、どっちみちアンデッドになるのは必至なので、アンデッド化する前の人間の姿のまま殺してあげたほうが遺体は綺麗だし、その方が遺族にとってもよかれという判断。
  • アンデッド化前なので被害の拡大を未然に防ぐこともできる。
  • だが、一般民からすると、見た目は一般民と変わりない段階での殺処分は反感も多い。
  • もしかしたらまだワクチンが間に合ったかもしれないという希望を抱かせてしまう。
• ハンティング感覚で入団している者もおり、一般民に誤解を与える一因になっている。

アガルタ (AGHARTA)

• 一般民隔離保護区。
• 抗体保持者によって運営されている特区で、“特別でない”“無力で”“可哀相な”一般民達を、世俗から隔離して“あげて”いる。
• アンデッドが蔓延る外界とは完全に隔絶されていて、コンピュータにより完全管理された、美しい緑地帯に囲まれた居住区。
• 一つの地区ブロックに20〜100人の一般民を保護していて、それぞれ数人の抗体保持者がマスターとして統括している。
• マスターは一般民との接触はせず、タワーと呼ばれる総ガラス張りの高層ビルの居住区から、保護区を見下ろすようにして暮らしている。
  • 内側からはガラス張りだが、外側からは鏡張りになっているので、外からタワーの中は見えない。
  • なので、一般民はタワーに住んでいるマスターの姿を見たことがない。
  • 一般民は、タワーにはマスターが住んでいること、そのマスターは抗体保持者であること等はなんとなく知っている。
  • 一般民は、マスターがどんな人間で、何人住んでいるのかなどは一切知らない。
  • マスターからは保護区全てが監視できる。
• 近年、保護区で生まれ、外界を知らずに育つ一般民も増えてきて、外界への強い憧れを持って保護区を脱走する者もいる。
  • 外界からアンデッドウィルスを持ち込まないため、保護区に入るには、厳しいメディカルチェックを受ける必要があり、一度脱走してしまうと保護資格を失ってしまうことが多い。
  • 万が一、保護区でウィルス感染が認められた場合は、その保護区ごと「殺菌」処理される。中の人間たちは皆殺しにされるので、マスターに情が湧いたりする事を避けるため、保護区住人とマスターとの接触はタブーとされている。
• マスターの思想によっては、一般民の妊娠･出産を認めない地区もある。

イニシエイツ（initiates）

• アガルタに保護されている一般民のこと。
• 一般民の中でも、とりわけ抗体が作られにくかったり、諸事情でワクチン接種が出来なかったりする人間が優先的に保護される。

シャンバラ(Shambhala)

• アガルタに隣接するウィルス抗体保持者の街。
• アンデッドの脅威から完全に隔離されているため、都会的で享楽的な街づくりとなっている。

ストーリー

消防団２１３分団に所属する兄が、アガルタα地区マスターをしている妹の元にやってくる。

兄は団員として有能だったため、その分団ではなく、その上部組織の団の実戦部隊に新たに配属されることになっていた。

待遇としては格段に栄転だが、職務としてはより過酷に危険になり、勤務地が居住の地方から都市部に移るため、しばらく会えなくなる前の挨拶に来たのだ。

そんな兄に、妹は、「命の危険が伴う消防団など辞めて一緒にアガルタのマスターとして暮らしましょう」と語りかける。

　

我々はウィルス抗体保持者として神に選ばれた特別な存在であるのだから、抗体を持たない可哀相な一般民を保護してあげるべき。

アガルタでなすべきことはたくさんある。

更に、生まれつきにウィルス抗体を持つ人間を生み出すことが出来るのは、ウィルス抗体保持者だけだ。

ならば自分達は、この危険な世界の中で、より困難に立ち向かうことの出来るウィルス抗体保持者をどんどん増やしていくべきだ。

命の危険が伴う特殊部隊などは、ウィルス抗体保持者が行うべき仕事ではない。

　

そう言う妹を静かに制し、「確かに我々は特別な存在なのかもしれない。だが、だからこそ、自分は戦いに赴く。」と告げる兄。

　

このアガルタは確かに美しく安全だが、完全に隔離され、自分の意志で生きる事を許されない人々は果たして幸せだろうか。

アガルタに保護されず、アンデッドの脅威と戦いながら生きている一般民も外界にはたくさんいる。

自分はその人々こそを守りたい。

神に選ばれた特別な存在だからこそ、あえてアンデッドに立ち向かいたい。

　

兄妹は、お互いが自らを特別な存在だと自覚しつつ、そのあり方への考え方の違いを思い知る。

だが、仲の良い兄妹であった二人は、互いに互いの考え方の違いを、認めることは出来なくとも理解し、二人の会話は声を荒らげることなどなく、穏やかに過ぎていく。

「ではせめてどうか命を大事に。決して死なないで。」という妹に、「君もこの美しく堅牢なタワーでどうか平和に。前言と矛盾する兄のエゴだが、やはりたった一人の妹が、危険な外界ではなく、安全なアガルタにいることは安心この上ない。」と答える。

そして、兄がタワーを去ろうとしたとき、タワー内に警報音が鳴り響く。

α地区の住人が、口々に不満を言いながら、タワーの周囲に詰め掛けていたのだ。

α地区は、アガルタの中でも特に、全く抗体を持たない脆弱な人々を保護していた。

予防接種をしても、抗体がまるで作られない人々で、妹は、このような人々は決して外界に出すべきではないし、その個体数を増やすべきではないとも考えていた。

α地区の住人は、マスターのそういう考え方に閉塞感を覚え、もっと自分達に自由を与えるべきだと口にしていた。

また、長期間、外界と隔絶されていたため、α地区の住人の間では、外界では既にアンデッドの脅威は払拭され、自分達は不当に隔離されているのではないかと言う不信感も溜まっていた。

実は、α地区の住人の中に、アガルタのセキュリティを掻い潜って、密かに脱走と帰還を繰り返していた者がいたのだ。

アガルタを出た脱走者が最初に見たものは、ウィルス抗体保持者の居住区「シャンバラ」であった。

そこは、ウィルス抗体保持者の街であるため、アンデッドの脅威から完全に解放されていた。

街は整然として美しく、娯楽に満ち溢れ、華やかで刺激的だった。

脱走者は、華やかなシャンバラを見て、外界は完全に安全だと思い込んだ。

実際にはシャンバラもまたアガルタと同じように外界とは隔絶されており、外界は荒廃した街が広がり、変わらずにアンデッドが猛威を振るっていたというのに。

脱走者は、誤った知識をα地区に持ち帰った。

その結果、住人の不満があふれ出したのだ。

住人達は、タワーに詰め掛け、投石や攻撃を繰り返した。

タワーの外装の強化ガラスはそれくらいで傷つけられたりはしなかったが、この事態は好ましくないと考えた妹は、住人達に姿を見せることなく、音声のみで住人達に説明と説得を繰り返した。

それを見守っていた兄は、モニターごしの住人たちの姿の中に、気になる者を発見した。

それこそが最初の脱走者であり、彼は、興奮した様子で首をしきりに掻いていた。

掻くというより掻き毟るといった呈で、首が蚯蚓腫れになって、肌を掻き破って血が噴出しても、彼はまだ掻き毟るのをやめなかった。

兄には、それが感染者特有のものだとすぐにわかった。

シャンバラの人々はウィルス抗体保持者であるがゆえに、シャンバラ内の除菌にはそれほど神経質ではない。

シャンバラ内にはアンデッドウィルスが存在しているのだ。

脱走者は、シャンバラを徘徊した際に、野良猫からアンデッドウィルスに感染していたのだ。

　

すぐさまタワーから保護区に移動する兄。

そして、住人達の前に姿を現すや否や、脱走者を撃ち殺した。

脱走者は、人間の姿のまま死亡。

アンデッド化する前に処理できてよかったと安堵する兄の周りを、何も知らない住人達が怒りに顔を歪ませながら取り囲む。

長く隔離され、アンデッドを見たことがない住人にとって、兄は、突然現れて同胞を殺した殺人鬼だった。

　

----------------------　ここまで　----------------------

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