2015/09/27
異世界の勇者と銀髪の魔術師
【プロローグ】
死ななきゃ。早く。
そのとき、脳裏を占めていたのは、恐怖よりも絶望よりも何よりも、"焦燥"だった。
死ななくちゃ。早く。今すぐに。
もう生きてはいられない。
早く死ななくては。自分を見る周りの目が、今までとは一変して軽蔑の色に染まるのを見てしまう前に。
自分を取り巻く世界が一瞬で瓦解するのを見てしまう前に。
一分でも一秒でも早く。今すぐに。死ななくては。
そうして少年は、焦燥に突き動かされるように屋上を目指し、フェンスを乗り越え、─────飛び降りた。